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崩れゆく機会均等 「格差」の中の県立高校 3

神奈川新聞2007年12月08日

世代超え連鎖の恐れ

 今春まで神奈川のある課題集中校に勤務していた教員は、親から養育放棄(ネグレクト)された男子生徒とかかわった。

 母子家庭の男子は、授業料や電車の定期代をアルバイトで稼ぎ、最恵り駅からバスで30分ほどかかる高校までは歩いてバス代を節約した。母親はわが子にまったく無関心だった。男子は夜遅くまでのバイトの影響で遅刻が重なり、卒業の望みが消えた三年生の冬に中途退学した。
 同校はひとり親家庭が多く、両親がいても複雑な事情を抱えた家庭は少なくなかった。劣悪な家庭環境が生徒に影を落とす。教員は「大人に気持ちを受け止めてもらったり、親身になって怒られたりした経験が少なく、愛情に飢えている生徒が多かった」と振り返る。
 同校では今春卒業した生徒は入学時の半分にとどまり、三年間のうちに100人超が退学した。

 ある課題校の教員は「出来の悪い生徒」とレッテルを張られて苦しんできた生徒を多く見てきた。「小学校三年生ぐらいで学力が止まっている。先生らに『落ちこぼし』されたのだろうとおもんばかる。
 三年の担当クラスでは「ブルーカラーの家庭」がほとんどだった。学歴に価値を見いださない親が多かった。生徒も上昇志向がない。親と同じ単純労働やフリーターなどを選ぶ以外に考えが及ばない。
 「『どうせおれなんか、だめだよ』と最初からあきらめている。親も子供に多くを望んでいない」。格差が世代を超えて連鎖しかねず、教員は親子への動機付けの難しさに悩む。

 「塾に通わせる余裕はないので、学校で面倒みてください」。低所得者向けの公営住宅に囲まれた県東部の市立中学校の教員は、家庭訪問で親にこう言われた。
 同校で塾に通う三年生は3、4割。教員は「自宅学習する生徒がほとんどおらず、学力が定着しない」と嘆く。今年の全国学カテストと同時に行われた生活調査によると、県内公立中三年の通塾率は約7割、自宅でも学習している生徒は約9割で、同校は遠く及ばない。
 子供に「勉強しろ」と口酸っぱく言う親は少なく、生徒の方も学力の高い高校に合格したいという希望を抱かない。
 教員が担任する三年生のクラスのひとり親家庭は25%の9人に上る。教員は「経験則では、5段階の成績で5や4が多い生徒の家庭は安定しているが、1や2が多い生徒は家庭が不安定な場合が多い」と指摘、格差の再生産を懸念した。
 だが、生活保護世帯などを対象とする授業料免除率の推移=表=では、高率の課題集中校や定時制ではさらに率が高まる一方、率が低い進学校ではむしろ下がった学校もあった。格差拡大で二極化に拍車が掛かっている。

県立高校授業料免除率の推移
全日制(高率順)

学校 2003年度 04年度 05年度
16.4% 17.3% 22.0%
18.8% 19.2% 21.4%
16.1% 17.9% 19.5%

全日制(低率順)

1.6% 0.8% 0.4%
0.3% 0.3% 0.4%
0.4% 0.2% 0.4%

全日制(低率順)

21.6% 19.8% 23.2%
9.9% 16.1% 20.4%
16.0% 16.8% 20.1%

※県教委調べ