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「愛国心」と歴史教育 1
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神奈川新聞2008年03月31日 |
日本人の心 先人に学ぶ
引地孝一 県教育長に聞く
戦後六十年が過ぎ、戦争体験が風化する中、近現代史学習の在り方があらためて問われている。こうした時代背景の下、県教育委員会は全国で初めて県立高校で日本史を必修化する方針を打ち出した。日本史を重視する底流には何があるのか。連載の初回では、引地孝一県教育長(三十一日付で退任)に必修化の狙いについて聞いた。(聞き手・成田洋樹)
−必修化の目的は。
六十年変わらなかった教育基本法が改正されたように、日本は今、新しい時代に向かって自分たちの足元を見詰め直すことが必要だ。国際社会の中で生き抜いていくには日本史を学ぶことが大事。県立高校の生徒の三割が日本史を学ばずに卒業している現状がいいとは思わない。
−歴史学習が「思いやりの心をはぐくむ」と主張しているが、その真意は。
神奈川ではいじめ、不登校、暴力行為の件数が全国でも多い。思いやりの心の不足が背景の一つ。日本の歴史、文化、伝統の学習を通じ、思いやりの心をはぐくんでほしい。
−県教委が学校設定科目として日本史系の独自科目を設けるのではなく、従来の日本史A(近現代史)を必修とする考えはなかったか。
従来の世界史、日本史の両方を必修とすると、(他科目も含めた全体の教育課程の編成で)校長の裁量を狭めかねない。(日本史必修化で履修者の負担が増える)地理への影響も考えて独自科目をつくることにした。
−教育現場は「学校の教育課程編成権を制約する」と批判している。
日本史必修化は学校単独で答えを出すのは困難なテーマで、県教委が一定の役割を担う必要がある。校長会の理解を得て取り組んでおり、編成権を極端に損なうことにはならない。
−本来、各高校が生徒の実情に応じて置く学校設定科目を、県教委が必修化するのはおかしくないか。
学校にとっては選択肢が広がったと考えている。
−君が代斉唱時の不起立問題とともに、「愛国心」教育の一環ではないのか。
愛国心や国旗、国歌の話とは、発想の次元が違う。日本人としての思いやりの心を、先人が歩んできた歴史から学んでほしい。
−世界史が引き続き必修となった新学習指導要領の改定議論についてはどう見ているか。
高校での日本史必修化だけでなく、小中学校で日本史を学び、高校で世界史を学ぶという今の小中学校、高校の全体の教育内容の見直しについて国に要望していた。丁寧な議論の中で答えが出るものと思っていたが、議論が不十分で現状維持の結果になった。
○県立高校の日本史必修化
現行の学習指導要領では、世界史必修、日本史と地理のどちらかを選択する。県教委は首都圏の都県教委とともに文部科学省に日本史必修化を要望。しかし、新指導要領でも世界史必修となり、独自に日本史必修化の方針を決めた。新指導要領の施行予定の2013年度から実施する。教育現場からは、「愛国心」教育を盛り込んだ改正教育基本法を背景にした流れと受け止め、「愛国心教育の強制ではないか」と懸念する声が上がっている。
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