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教員免許更新制度導入へ(上)

神奈川新聞2008年08月18日

先生も夏休み猛勉強

 来年度から始まる教員免許更新制に伴う講習(三十時間)を控え、この夏全国の一部の大学で予備講習が行われている。文部科学省の委託事業で、本番の講習がスムーズにいくよう研究・検証するのが狙いだ。予備講習に限って受講料は無料で、受講して修了認定を受けた時間分は本講習で免除される。県内で委託された五大学と一法人(国立特別支援教育総合研究所)のうち、横浜国立大学(横浜市保土ケ谷区)で行われた予備講習の様子を紹介する。  (鈴木秀隆)

 「これからの十年を見据えた新しい学びを展開する時間であってほしい」。八月十一日に同大学で行われた「教育の最新事情」の講習の冒頭、同大学教育人間科学部の福田幸男教授(前学部長)は約百人の受講者に呼ひかけた。
 このテーマは全教員にとって必修に位置づけられた項目で、一日六時間ずつ二日間が当てられている。つまり課せられた三十時間のうち十二時間を占める。
 心理学が専門の福田教授が担当した午前中の二時間は子どもの変化について理解を深めてもらうため、「子どもの発達に関する最新の知見」「子どもの発達課題の克服」の二項目を中心に展開。教育基本法の改正で新設された「家庭教育」を踏まえ、家庭の教育力低下の背景、「少なく生んで賢く育てる」傾向などを解説した。
 「(現在の親を批判して)昔は良かったといわれるが、そうではない。周囲に支える力があった」「僕のために(両親が)一生懸命にやってくれた記憶がない。現代の親の方が熱心だろう。しかし結果論で昔の親のほうが、といわれがち」などと自らのエピソードを交えながら分かりやすく説いた。
 最後の十五分間は理解度を測る記述式の「試験」として「現代っ子の発達の特徴」「心の発達課題の定義」の二題が与えられ、参加した先生たちは黙々と書き込んでいた。
 男性高校教諭は(53)は「講習の内容は確認という意味でも面白かった。この形ならいいかもしれない」と満足そうな様子だったものの、制度のあり方については「実際にスタートすると教員の実費負担のうえ、県内で受講できるのか。都内ならまだしも、他県まで行く必要が生じるのか分からない」と不安を口にした。
 また、小学校教諭の女性(53)は「この仕組みで資質の向上や更新制度が成り立つのか疑問。講習も発展的な部分を見てみないと何ともいえない」と話した。
 同大学ではこのほか「国語教育の過去・現在・未来」(六時間)、「活用する力を育てる算数授業づくり」(同)、「これからの理科教育における指導・評価の視点と方法」(同)など各教科ことに九講習(各定員二十〜百人)を用意。八月二十九日まで延べ五百人が受講する。

教員免許更新制
 校長など一部の管理職を除いた国公私立の幼稚園から高校、特別支援学校までの現職教員が対象で、免許の有効期限は10年。更新時に30時間(一日6時間の研修として5日間)の講習・認定を受ける必要がある。最初の対象者は2011年3月末で満35歳、45歳、55歳。文科省によると、09年3月31日以前に授与された免許状(旧免許状)は有効期間の定めはなく、いわゆる「ぺーパーティーチャー」は教員になる前に講習を受ければ教壇に立てる。