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ビザなしの子 学習権に危機

神奈川新聞2009年05月14日

入管難民法改正案 外国人一元管理へ
通知届かず、未就学にも
存在、”地下化”の恐れ

 国会で審議中の入管難民法改正案が成立、施行されれば、「ビザがない外国人の子どもの学習権が奪われる」と外国人の支援団体などから心配する声が上がっている。現行では市町村に外国人登録すれぱ、学齢期の子どもの家庭にもビザの有無にかかわらず就学通知が届いていた。だが、改正法案の内容は外国人登録証を廃止し「在留カード」で国が一元管理するのが柱。法務省は「改正法施行後は(在留カードのない子どもに)就学通知は出せなくなる」との見解を示している。(柏尾安希子)

 「(法改正で)子どもが通学できなくなっても仕方がない。帰国したら仕事がない。子どもに石を食べさせられないから」。県内に住むフィリピン人女性(35)は淡々と話した。
 女性は、十七歳でタレントとして来日。日本人男性と結婚、離婚したが、在留資格が切れた後も日本で生活している。子どもは三歳から中学二年までの四人。「強制送還されそうで怖かった」が、子どもを通学させるため外国人登録をした。
 日本も締約国の国際人権A規約や国連・子どもの権利条約では、在留資格こ関係なく学齢期のすべての子どもに教育を受けさせなけれはならない。一九九一年一月の旧文部省通知を根拠に、これまで外国人登録をした子どもは学校に通うことができている。
 だが、入管難民法が改正されたらビザのない子どもの就学はどうなるか一。法務省入国管理局総務課は「就学通知を出すような積極的な行政サービスはできなくなる」とし、「改正後から施行まで三年間ある。その間に入管に出頭してもらい、個別状況を見て在留特別許可を出す場合もあり得る」と歯切れが悪い。
 外国人の支援活動をする難波満弁護士は「法改正後、外国人に住民票ができることはいいこと」としながらも、「日本で暮らす多くのビザがない外国人をどうするのか、実態に即した制度をつくるべきだろう。ビザがない子どもの教育機会が奪われないかも心配」と話す。
 頭を抱えるのは、外国人の子どもとかかわる県内の学童保育の男性指導員。「学校とつながることが子どもにとって力になる。つまはじきにして、ぶらぶらさせるようなことになっては」と不安顔だ。
 在日外国人教育生活相談センター「信愛塾」(同市南区)のスタッフも、滞在資格がない外国人の情報を把握する機関がなくなり、存在が“地下化”してしまうことを憂い、「法的にいない存在にされてしまう子どもは、例えば新型インフルエンザでワクチン投与が必要なときにどうずればいいのか」と指摘している。

◆入管難民法改正案
原則3ヵ月を超えて滞在する外国人に国が「在留カード」を発行し、不法滞在への対処を厳格化する内容。4月24日に国会で審議入りした。入国管理局によると、ことし1月1日現在の不法残留の外国人は約11万3千人。現行の外国人の情報管理は、入国や在留許可を国が担い、外国人登録を自治体が担当する。この二元管理でビザがなくても就学できた。改正されれば、入国管理と登録を国が一手に担うことになる。