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2学期制と3学期制

神奈川新聞2010年10月04日


横浜市教委 2学期制前校実施を撤回
メリットどちらに?

 県内では2学期制を実施する小中学校が主流となるなか、以前の3学期制を復活させる動きが出始めている。横浜市立小中学校の場合、市教委に促されて約500校のほとんど2学期制を導入したが、本年度までに小中学校計15校が3学期制に戻した。2学期制と3学期制はどっちがメリット?今後、3学期制復活校は増える?同市の校長先生たちに聞いてみた。(柏木智帆)

 横浜市教委は「3学期制より多くの授業時数を確保できる」「長い期間の中で評価ができる」などのメリットを挙げ各校に2学期制導入を勧め、2004年度までに市立小中学校の97・9%に当たる489校が2学期制を実施するようになった。
 だが、08年度に1校、09年度に3校が3学期制に戻した。これを契機に、市教委はことし2月の全体校長会で2学期制、3学期制のいずれを判断するかは各校に任せるとし、全小中学校での2学期制実施方針を事実上撤回した。その理由を「終業式後に授業行うなど、各校が工夫して授業時数を確保できているため」(市教委)と説明する。これを受け10年度はさらに小学校4、中学校7の計11校が3学期制に戻した。
■頭を”リセット”
 神奈川区のある小学校は3期制に戻した。校長は「成績表が前期と後期の2回だけ」と2学期制のデメリットを挙げ、「夏休み前に成績表を見て学習を振り返ることが子どもには自然な流れ」と話した。
 金沢区のある小学校も3学制に。校長は「2学期制のときは運動会と秋休みがぶつかって、成績処理に無理があった」と言う。
 同区のある中学校では、教職員と保護者にアンケートを実施。その結果、ほとんどの教職員が「3学期制にメリットがある」と答え、保護者は9割以上が「3学期制に賛成」。これを受け、3学期制にした。2学期制は夏休みを利用した学習の連続性もメリットとされていたが、同校の校長は「夏休みは勉強だけではなく、頭をリセットさせたり自然体験などから多くを学び、生きることを豊かにする期間」と位置付けた。
■心揺れる続行派
 中区の中学校長は「2学期制でやっていく」と断言。理由は「テストの回数が減って教員の事務作業が軽減された。生徒にとっても、長い期間での評価が生かされる」ためだという。
 だが、「2学期制で様子見」、しばらくは2学期制で」と、続行を決めた校長たちも内心は揺れている。
 磯子区のある小学校長は「学習の結果を見てから長期休暇に入る3学期制は目標を持って勉強できる」という一方、「日本人はせっかち。2学期制の効果はすぐ表れない」とも話した。
 中区の中学校長は「2学期制にしたときに時期を移動させた学校行事を再び動かすわけにはいかない」。少なくとも来年度までは2学期制を続けるという。
■学区と評価難題
 泉区のある団地の子どもたちは二つの小学校に通学している。その一つの小学校長は「3学期制にするならば歩調を合わせないと同じ団地で違う学期制になってしまう」。
この2校を含む近隣3校の子どもたちが進学する中学校は3学期制に戻しており、「4校で相談していく」と校長。
 瀬谷区のある中学校長は、3学期制に戻した場合の難題を指摘。「旧3学期制に戻すイメージが保護者には強いが、違う。以前の3学期制は、成績の付け方が相対評価だったが、いまは(生徒個々を観点別に見る)絶対評価。3学期制は学期期間が短いため、授業数が少ない上に実技がある教科は材料が少なく評価しにくい」「旧3学期制との違いを出して誤解を解くためにも『1学期、2学期、3学期』ではなく、『1期、2期、3期』『ファーストステージ、セカンドステージ、サードステージ』と名付けようか…」と同校長。
 2、3学期制のいずれにするか、悩みは尽きない。

○公立小中学校の2学期制実施状況
 県内では2003年度から、横浜市と葉山町を皮切りに、各市町村教委が学校管理運営規則を改定。校長権限で学期制を選べるようになり、3学期制から2学期制を導入する動きが出始めた。実施校数はここ数年、ほぼ横ばい傾向にあり、09年度は小学校861校のうち71・3%の614校、中学校413校のうち72.1%の298校が、それぞれ2学期制を実施、ほかに小中学校7校が試行中。県内に比べ全国では実施率が低く、09年度は小学校21・8%、中学校23・0%。