本文へジャンプ

ホーム > 神奈川の教育情報 > ニュース >歴史教材 また誤り

歴史教材 また誤り

神奈川新聞2010年12月02日


県教委独自作成
沖縄戦 4月でなく3月

 県教育委員会が作成した日本史独自教材「近現代と神奈川」の内容で、「沖縄戦の記述に誤りがある」と、沖縄の歴史研究者が指摘していることが1日、分かった。教材は「(1945年)4月には沖縄本島に米軍が上陸し、沖縄戦がはじまった」とあるが、研究者は「3月末に始まったというのが今の歴史学の常識だ」と批判している。(松村祐介)

 教材は9月の県教育委員会でいったん決定後、県議などからの指摘を受け、11件の訂正、修正を加えた上で11月30日に再決定されたばかり。県教委は「意見を真摯に受け止め、修正の是非を検討する。歴史的事実に照らして誤解を招く表現という判断になれば修正もあり得る」と再度見直す可能性も出てきた。
 横浜教科書訴訟の原告で、沖縄戦に詳しい琉球大学の高嶋伸欣名誉教授によると、沖縄戦は3月26日に慶良間諸島に米軍が上陸し、日本軍と衝突したことで始まった。沖縄戦の象徴でもある同諸島での集団自決は生存者の証言だけでなく、2007年の高校日本史の教科書検定問題でも取り上げられた。
 高嶋名誉教授は「執筆者だけでなく、県教育委員会が誰も間違いに気付かなかったのは勉強不足」と話す。
 県教委は、沖縄戦の開始時期の認識について「現段階ではコメントできない」と話す。12月中旬には製本業者を入札で決めるとしており、「検定教科書や資料を基に修正すべきかどうか速やかに結論を出したい」としている。

◇不勉強極まりない/古い資料踏襲◇
−認識の甘さ指摘−沖縄関係者

 神奈川県教育委員会が作成した日本史教材が、沖縄戦の開始を4月の米軍の本島上陸と記載していることについて、教科書問題や沖縄戦に詳しい沖縄県内の関係者からは、史実の認識に対する甘さや軽率さを指摘する声が上がった。
 沖縄女性史家の宮城晴美さんは「沖縄戦を記述したことには敬意を表する」としつつ、「やるなら事実を忠実に記してほしい」と注文。4月の本島上陸をもって沖縄戦開始とする認識は、県内でも復帰前後まではあったが、本島の前に慶良間への上陸があったことは、既に共通認識として浸透していると話す。
 慶良間の住民が「集団自決」を含めた戦争体験を語り、行政が住民側の立場で丁寧に記録してきたことで、慶良間上陸への認識が広まった経緯があると指摘。教材の記述について「教育現場の認識が足りないのではないか」と疑問を呈した。
 県史編集委員の大城将保さんは「教材の担当者は、古く誤った資料を踏襲しのではないか」と言う。「このままでは現場の教員も混乱する。早く改めるべきだ」と提起した。
 座間味島で「集団自決」を体験し、姉を失った宮城恒彦さん(76)=豊見城市=は「不勉強極まりない。開いた口がふさがらない」と怒りを込めた。(沖縄タイムス社提供)