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君が代斉唱めぐり地裁

神奈川新聞2011年09月01日


不起立教職員の情報収集は適法
「思想信条も行政裁量内」

 県教育委員会が、卒業・入学式で君が代斉唱時に起立しなかった教職員名を収集するのは、思想信条に関する情報の取り扱いを原則禁止する個人情報保護条例に違反するとして、県立高校の教職員27人が県に個人情報の破棄などを求めた訴訟の判決で、横浜地裁(佐村浩之裁判長)は31日、「不起立情報は思想信条情報に当たるが、条例違反にはならない」などとして、訴えを棄却した。
 佐村裁判長は判決理由で、不起立情報は「教職員の国歌に対する歴史観・世界観などに結び付けられ、思想信条情報に当たる」と認定。
 一方で、県教委が校長らを通じ、教職員に起立するよう命令や指示をしていたことが推測できるとし、「起立を求める職務命令、指導に反した教職員の違反事実を人事管理上、必要として収集、記録した」とした。
 その上で、県教委が不起立情報を収集したことは、「正当な事務や事業の実施のために必要がある時は取り扱いを認める」とする同条例の例外規定に該当するとし、今回の県教委の氏名収集は「行政の裁量内」と結論付けた。
 判決によると、県教委は2006年から不起立者名を収集し管理。県個人情報保護審議会などが収集は不適切との答申をしているが、県教委はその後も収集を続けている。
 判決後、原告団長の外山喜久男さん(61)は「そもそも職務命令はなく、あったかのように正当化した判決はおかしい」と述べた。原告側弁護団は控訴する方針。
 黒岩祐治知事は「県の主張が認められたと受け止めている。これまで通り、卒業式、入学式が適切に行われることを期待する」とののコメントを出した。(報道部)

「強引な論理」弁護団は憤り
 思想信条情報に当たるという原告側主張を認めつつ、収集は「行政の裁量内」とした判決。原告らは一様に「非常にひどい判断。不当」と憤った。
 同様の事案で条例違反を問うた訴訟で大阪高裁は2007年11月、違法な情報収集と認め、大阪府枚方市教委に賠償を命じている。
 同市教委の場合は不起立理由も調べており、弁護団の阪田勝彦弁護士は「理由を聞かなくても、客観的な事実だけで『思想信条情報に該当する』と判決で触れたのは画期的」と話す。
 それだけに、岡田尚弁護団長は「地裁判決は強引な理論を重ねている」と憤る。弁護団によると、起立を求める職務命令がなかったことは、県内の教職員が原告となった別の訴訟の高裁判決で認定され、6月の最高裁で確定しているという。岡田弁護団長は「『命令・指示がなされたと推認される』とした今回は、あり得ない事実認定をしている」と非難した。
 判決後、原告団団長の外山さんは「(私の)思想信条が変わることはない」と主張。控訴を見据え「われわれの思いが伝わるまで闘い続ける」と話した。(松島佳子)