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工業高生は「金の卵」

神奈川新聞2025年7月2日

人材不足で注目増す
来春卒業 採用本格始動

 2026年春に卒業する高校生の採用活動が1日、本格的に始まった。求人倍率がバブル期を上回る中、とりわけ「令和の金の卵」と人気なのが工業高校生。少子化に伴う深刻な労働者不足を背景に、専門知識や実習経験があることから注目が集まる。求人倍率は高校生全体と比べて7倍に上がり、人材獲得に奔走する企業から引く手あまだだ。(荻野 輝)

 6月下旬、県立向の岡工業(川崎市多摩区)に12dのクレーン車がお目見えした。生徒が運転席に乗り込み、現役オペレーターの指導を受けながら荷物をつり上げ、移動する。神奈川建設重機協同組合(同市川崎区)の出前授業に2年生58人が参加し、操作体験や座学を通じてオペレーターの魅力を知った。
 授業をきっかけに、毎年数人が重機業界への就職を決める。建設科都市工学コース2年の山口月愛さん(16)は「授業を就職について考える機会にしたい」。村谷空峨さん(16)は「卒業後は(進学ではなく)就職すると決めている。選択肢がたくさんあり、どの職種に就くか考えたい」と話した。
 同組合によると、出前授業を始めた16年以前は、オペレーター業務を知る機会が乏しく、志望する高卒生の獲得は困難だった。近年は出前授業などの取り組みが功を奏し、志望者が大幅増。24年度は同校建設科を卒業した4人がオペレーターの道に進んだ。
 出前授業にクレーン車を提供した多摩川機工(同市宮前区)の伊藤明成社長(64)は「中途採用の多い業界だが、高卒生が獲得することで『若返り』という新しい風が吹く。出前授業で業界をアピールし、人材を獲得したい」と意気込む。
 全国工業高等学校長協会によると、工業高校生の求人倍率は、03年卒は3・1倍だったが、年々上昇し、24年は27・2倍。高校生全体(3・79倍)の7倍に上がる。同協会の担当者は「工業高校を志望する生徒自体が減少している。さらに工業高校生の大学進学率が上昇し、担い手が少なくなっている。一方で技能系の人材は不足し、求人数が増加している」と工業高校生の人気の背景を分析する。
 来春卒業の高校生の採用活動が事実上スタートした1日、向の岡工業高校には企業からの問い合わせが相次ぎ、97社が実際に足を運び、資料などを持ち込んだ。
 同校には、24年度は2千社を超える企業から求人案内が届いた。進路担当教諭の小俣真一郎さん(63)は「大学や専門学校に進学する生徒が多く、就職は1割程度。その中で工業高校生の採用を希望する企業は多く、進路選択も充実している」と話している。