昨年ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中煕巳代表委員(93)が29日、県弁護士会館(横浜市中区)で講演した。長崎の被爆体験から平和への願いを語り、次世代の若者らにエールを送った。県弁護士会主催のイベント「人権シンポinかながわ」の一環。(平野 裕一)
「核兵器は兵器ではない。兵器にも値しない。核兵器は悪魔の道具」と田中さんは語気を強めた。「核兵器で国を守ろうと考える人は国を守ろうとしていることにはならない。悪魔の道具で国を守るというなら、あなたは悪魔ですか?」
田中さん自身も被爆者。13歳のころに長崎で被爆し、「真っ黒焦げの遺体が野っ原にたくさん転がっていた」と振り返る。親族の安否を確かめるために街中を歩いたが様変わりしていた。
「戦争であってもこんな殺し方があるのか」。一発の爆弾による惨劇から、少年の心に戦争のおぞましさが焼き付いた。
戦後80年がたった。あの日から核兵器の使用が避けられてきたのは、「被爆者たちが被爆体験を通し、『使ってはいけない兵器だ』と必死に証言して回ったから」。証言を続けてきた末に、道徳的に許されないという“核のタブー”を「世界の中で築き上げることができた」と力を込めた。
田中さんの登壇後には、核兵器廃絶と平和な世界の実現を国内外で訴える「高校生平和大使」の一人である青柳潤さん(16)=逗子開成高校1年=ら県内の高校生4人が取り組みを発表。その後、田中さんに「被爆を知らない若い世代にはどのように伝えていきたいか」などと質問が出た。
田中さんは「相手の心を動かすようにする。ただ知識として残るだけではなく、『行動しなきゃいかんな』という風に考えてもらえたらいい。だけどそれが難しい」と強調。続けて「一番良いのは対話。一人一人が顔を見て、言葉に対する反応が出るので、そういう表情を見ながら話をしていくということが非常に大事」と語った。
核兵器廃絶に向け、田中さんは「日本の若い人たちが中心になり、世界の若者たちにも『絶対に使ってはいけない』という、その世論をもっともっと大きくしてほしい」と思いを込めた。