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教育不足悪化4317人

神奈川新聞2026年03月06日

25年度当初文科省調査
処遇改善策効果なく

 全国の公立小中高校と特別支援学校が2025年度の始業日時点に、全体の8・8%に当たる2828校で計4317人の教員を当初計画通りに配置できなかったことが5日、文部科学省の調査で分かった。前回21年度調査の2558人の1・7倍で、割合は5・8%から悪化した。産育休取得者や病気休職者の代わりを補充できず、教員不足に陥る現状が改めて浮き彫りとなった。文科省は志望者を増やすために教員の処遇改善や働き方改革を進めるが、効果は限定的と言える。

 不足がゼロだったのは東京都や高知県、川崎市など9教育委員会で、島根県と福岡県、熊本市では不足が生じた学校の割合が30%を超えるなど地域間格差が大きかった。神奈川県も27・7%と髙かった。前回より状況が改善したのは川崎市や相模原市を含む23教委で、神奈川県や横浜市など41教委は悪化した。
 調査は都道府県と政令都市など68教委に実施し、4月の始業日時点と学校活動が本格化する5月1日時点の状況を集計。始業日時点の不足の内訳は、小学校1398校(7・6%)の1911人、中学校828校(9・1%)の1157人、高校310校(9・0%)の571人、特別支援学校292校(26・1%)の678人だった。
 各学校は非正規の臨時的任用教員を充てるなどして対応するが、5月1日時点でも全体で2589校(8・1%)の3827人が不足。小学校770校では1086人分の学級担任が埋まらず、校長や副校長、少人数指導のために設置した教員らがカバーしていた。中学校12校は美術、技術、家庭の教員を確保できず、必要な授業ができていなかった。
 神奈川県内の不足数は始業日時点で県が185校355人(5月1日時点で69校203人)、横浜市が80校99人(同75校84人)、川崎市が0人(同0人)、相模原市が12校12人(同9校9人)だった。
 中でも県立や県域の特別支援学校の不足数が全国的に突出しており、両日時点で111人と97人だった。全32校のうち31校の学校で不足していた。
 教員不足の要因を尋ねると、産休や育休取得者の増加や、欠員を補うための臨時的任用教員のなり手の減少、特別支援学級の増加を挙げる教委が多かった。

【図】2025年度の教員不足の状況
※文部科学省の調査による   不足人数(人)  不足が生じた学校数(校)  不足が生じた学校の割合(%) 
小学校  始業日時総合 1911  1398  7.6 
5月1日時点   1699 1292 7.1
中学校 始業日時総合  1157 823 9.1
5月1日時点    1031 744 8.1
高校  始業日時総合  571 310 9.0
5月1日時点    508 269 7.8
 特別支援学校 始業日時総合  678 292 26.1
5月1日時点    589 284 25.4
全体  始業日時総合  4317 2828 8.8
5月1日時点    3827 2589 8.1

教員不足の算出方法=今回の調査では、フルタイム勤務の教員1人を「1」とし、非常勤講師は「0・5」などと勤務時間数に応じた人数に換算している。例えば、フルタイム勤務の教員1人の欠員に対し、非常勤講師1人を充てた場合は0・5人の不足となり、充てられない場合は1人の不足となる。文部科学省は換算して1人以上の不足のある学校を「不足の生じた学校」としており、学校数が「0」でも不足人数が計上されている場合がある。  

悪循環招き現場疲弊 人材確保も改善見えず
 全国の学校で教員不足が一段と深刻化していることが文部科学省の調査で明らかになった。休職者の穴を埋められずに他の教員の負担が増し、さらなる人員減を招く悪循環も。文科省や教育委員会はあの手この手で人材確保に取り組むものの効果は薄く、疲弊する現場に改善の兆しは見えない。

▽しわ寄せ
 「誰かが抜けて、他の先生の負担が増え、さらに人が減っていった。子どもたちに影響しないよう笑顔を心がけていたが、正直つらかった」。東北地方の小学校に勤める男性教員は、かつての職場を振り返る。
 男性の勤務先では、担任を受け持つ教員が産休に入った際、代わりが見つからず担任を固定できない時期があった。するとドミノ倒しのように別の教員が病気休職した。男性は「もちろん休職する先生は悪くない。すぐに代わりが出せない体制が問題だ」と訴える。
 管理職も頭を抱える。関東地方の公立中の校長は、非常勤教員を探すために知人に声をかけて回り、80代の元教員に頼んだこともある。見つかっても非常勤の場合は授業以外の業務に携わらず「枠が埋まったように見えても他の教員にしわ寄せが行く。現場は疲弊感がある」と語る。

▽取り合い
 2025年度に採用された全国の公立学校教員の選考試験競争率(倍率)は、小学校2・0倍、中学校3・6倍、高校3・8倍と、いずれも過去最低。小学校では7年連続で過去最低となり、志願者の減少が目立つ。
 今回の調査で教員不足の小学校の割合が3割りだった青森県教委は、志願者を増やそうと23年度から高校生向けに小学校の職場体験を開催している。授業で児童と関わって、教員の魅力を感じてもらう取り組みだ。ハローワークへ求人も出し、担当者は「人材の取り合いの中。教員を選ぶ人を増やしたい」と話す。
 国は処遇改善を図ろうと教員給与特別措置法(給特法)を改正した。残業代の代わりに基本給の4%相当を支給する「教職調整額」は、26年1月から毎年1%ずつ引き上げて31年1月に10%となる。働き方改革も進め、26年度からは教委に教員の業務量管理の計画策定を義務付けた。
 ほかにも異業種からの呼び込みなど、あらゆる形で人材確保に取り組む構えだが、教職人気の回復は見通せない。文科省の担当者は「個々の子どもの特性に合った対応が求められ、教員のニーズは高まっている。手を尽くすしかない」と語った。