高総検レポート No 75

2005年7月13日発行

定時制から見た2005年度入試

〜 混乱続く定時制入試 〜

  1. はじめに

    2002年度から続く、定時制入試の混乱は今年度も改善されなかった。臨時学級増、クラス定員40人、2次募集開始後の臨時学級増、臨時学級定員増と、県教委の募集計画の帳尻あわせを定時制が引き受けている状況は続いている。一番の被害者は劣悪な条件の下、定時制に入学している生徒である。今年度入試の状況を振り返ってみる。
  2. 2002年以後の定時制入試に関する状況

    2002年、横浜市立定時制の募集停止が横浜地区の定時制に混乱を招いた。また、この年から始まった前期再編計画は「課題集中校」を中心にしたものであったことも混乱の原因のひとつである。2004年度からの全日制の計画進学率の低下もさらに混乱に拍車をかけた。県立高校の全日制の枠が狭まったことで、全日制を希望しながら経済的な問題などから私学へ行けないなど行き場を失った受験生が2次募集で定時制を受検する傾向が見られる。これは定時制の後期入試と2次募集との関係を見れば明らかである(2004年度・2005年度の合格状況を参照)。後期で定員割れを起こしている定時制が2次募集では1倍を超える状況になっている。その結果、定時制への進学者は2000年の1510人であったものが2005年には2670人と1000人以上増加した。
  3. 定時制の学級定数は40人は適正規模?

    県立定時制の学級定数は今年度も40人のままであった。東京都の定時制は20年以上前から募集段階で30人定員になっている。また、義務制の40人学級が実質的には35人程度になっていることも考え合わせると、教育効果を高めるために以前の35人に戻すべきである。
     今年度、募集計画の段階では横浜市立、川崎市立・横須賀市立の定時制は35人募集に戻したが、2次募集の応募後に横浜市立戸塚と川崎市立の普通科は40人になってしまった。全日制でさえ、転編入枠があり、1クラス39人になっている。困難な生徒が多い定時制を安易に40人にする事が再度行われたことから県教委は定時制を数あわせにしか考えていない事が明白である。原級留置者も定時制では多いので、募集クラス数のままだと1年生が1学級が50人近い人数になり、多展開のホ−ムル−ムを作るなど工夫が必要になっている。
     また、定時制が使用できる教室が足りないなど、多展開を行えない場合は、教室には机があふれかえり、生徒ロッカ−や下駄箱が不足するなど問題が多い。
  4. 生徒急減期に定時制の臨時学級増はなぜ必要なの?

    募集段階での臨時学級増は横浜翠嵐・希望ヶ丘・湘南・茅ヶ崎・津久井・追浜・磯子工と7学級( 280人)行った。全日制で学級減が続き、1学年5学級の学校もあることと比較すると、4学級( 160人)規模の定時制が復活したことは問題である。さらに2次募集の混乱に乗じて行われた翠嵐の臨時学級増と横浜市立・川崎市立の学級定数増は3次募集を行わないための苦肉の策であったであろうが、ここ数年の反省の上に行われた入試とは思えない失態である。本来、受検生は全日制への入学を希望しており、同様のことを行ってよいのなら、後期入試において全日制で行ってほしいものである。全日制のつけを教育困難な定時制に押しつけるのは非常に問題である。
  5. 県教委は「神の手」を持っているのか?(2次募集での県教委の圧力)

    2次募集で定員を超えた受験生がいた学校に対して、県教委がまた、「定員を超えて学校裁量枠をさらに越えて合格させろ」とお願いをしたようである。合否判定に県教委が圧力をかけたとなれば大英断(?)である。学校現場はただ、県教委の言いなりに入試を行えばいいのか。呆れるばかりである。その結果、各校の校長判断という形を取り、希望ヶ丘では180人、横浜翠嵐では167人と当初の募集を大きく越えて合格者を出すこととなった。横浜翠嵐では元々の学年規模の倍以上の生徒を合格させた。生徒急増期でも単年度で2倍の生徒を受け入れた学校は皆無である。人的・物理的な考慮はあったとは言え、現場は問題が山積みである。
     また、2次募集で志願変更した受検生にはどのように説明すればよいのであろうか。合格できるのであれば志願変更しなかったかもしれない。高倍率で不安をあおりながら、ほぼ全員合格させるという、ル−ルを自ら崩していく県教委の姿勢はいかがなものか。
  6. 入試のミスマッチは良いのですか?

    県教委は単純に全日制希望者である全日制不合格者が定時制を受検し、高校へ進学できないものが多数出現することを恐れ、今回の様なことを近年繰り返している。しかしながら、全日制希望者の定時制への入学というミスマッチは本当に問題の解決策になるのであろうか。入学後、すぐに不登校や休退学という状態にならないか。また、いままで定時制へきていた生徒たちの就学場所を奪ってはいないだろうか。
     県教委は教育改革との理由で3修制(3年で定時制を卒業できるようにする制度)を各定時制に強制してきた。2005年度からは神奈川県下総ての定時制に3修制が導入される。職を持つ生徒を含め定時制の生徒が無理なく3修制を活用できるのであれば良いのであるが、フルタイムの職業を持つ生徒には0時間目の実施など不利になっている。むしろ、現在の神奈川の方式は「入学希望者も施設もある全日制の定員を確保をせず、全日制には入れない者は3修制の定時制があるので我慢しなさい。」と言っているようなものである。全日制を希望しながら入学できない生徒の受け入れ先として定時制を利用することはおかしな話である。施設がない、教員がいない等の時代ならいざ知らず、施設も教員も充分にあり、高校の再編を行い学校数を減らしている、この時期に納得しがたいものである。前述のように、多くの定時制受験生はあくまでも全日制を希望していた生徒であって、3年で卒業できるとしても定時制を希望していたわけではないのである。
     同様なことは、横浜地区の定時制への不合格者を他地域の定時制へ送るかの様な募集計画でもいえる。夜の時間帯に通学する定時制は自宅や職場の近くにないと生徒が通学するのに困難である。交通機関の本数も少なくなるし、深夜バスを利用しなければならないなど経済的負担も増える。横浜地区の全日制募集枠を増加させ、定時制の倍率を減らし、受験生が近くの定時制へ無理なく通学できるようにするべきである。
  7. おわりに

    いずれにしても、募集計画のつけを定時制に押しつけたことは明らかである。次年度以後、ここ数年の状況が続かないよう募集計画を策定すべきである。



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