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高校神奈川 No.539

2007年03月05日

教育条件の悪化を招く「学校事務センター」に反対しよう

事務・現業の民間委託撤回!しかし・・・
 県教委は、1月15日「」正日「学校事務センター(仮称)」の設置について、神高教に対して具体的提案を行いました。神高教は、県教委の検討段階から「学校には、事務職員、現業職員が必要」として交渉・協議を進めてきました。結果として、当初の検討段階にあった「事務・現業業務の民間委託」」は撤回されました。また、「学校には巾緒戦一口.現業職員が必要」として.交潜・協議を進めてきまし。また、現業職員は各校に配置し、必要に応じてチームによる巡回業務を行うこととなり、現業労働組合は1月20日の中央委員会において、その方向でとりくんでいくことを確認しています。しかし、事務職員については、県内10カ所程度の学校事務センターを中心に、各学校の事務室には事務長と非常勤職員の2人配遣にするとしています。窓口業務.財産管理業務.証明書発行業務など、通常学校の窓口で行うことが想定される業務に対応できるとは考えられません。神高教は、県民サービスや教育条件を後退させる「学校事務せンター」には、反対の立場でとりくんでいくことを確認しています。

教育活動と結びついた事務室
 「学校事務センター(仮称)」の設置提案に対して、私たちは学校の事務室がいかなるものかをきちんと検証することが必要です。単に働く教職員の給与や福利厚生の事務にとどまらず、そこに学ぶ子どもたちの教育活動と大きく結びついて事務室が存在することを、私たちは大きく意識しなくてはなりません。
 事務室は、子どもたちが安心して学ぶための学校環境の整備と効率的な学校運営のために重要な役割を担っています。そのためにも事務職員の学校への配置は必要です。毎日、保護者、生徒、業者、など多くの電話もかかってきます。中には、授業料免除や奨学金の相談もあります。授業料や学校徴収金の未納、督促なども行いますが、このことは一律にはいきません。生徒の家庭環境や指導上の課題を考慮しながら、事務室と担任が協力して行います。また、安全のための急な調査も事務職員の役割です。パロマの給油器の事故の発覚の際には、急遽学校の給油器の形式など全ての調査が行われました。生徒が窓ガラスを割ると、修繕の以来も行います。消化器・火災報知器へのいたずらにも事務室が対応します。突然、卒業生が証明書の発行を求めてくることがあります。中には、明日使うと言うこともあります。その事が一生を左右することもあります。学校の事務室は生きています。一律のマニュアル通りの対応ではすまない状況の中で、子どもたちの教育を最優先して学校の事務室は存在しているのです。
 子どもたちのすぐそば、教職員のすぐそばに事務室があって、安心して日々教育活動が行われている、このことを私たちは忘れてはなりません。学校の事務室は、子どもたちと、保護者と、教職員とつながって日々仕事をしているのです。事務室の存在が「子どもたちの豊かな学びを保障する」ことに強く結びついています。

事務長と非常勤講師の二人の事務室
 事務長と非常勤講師の2人で、事務室が今まで通りの機能を維持していけるでしょうか。学校から離れた事務センターで、子どもたちへの細かい配慮が行き届くのでしょうか。学校は、教育課題が山積みし、それに対応した教育改革が求められています。事務職員も含めて教職員全体が協力・協働の視点で一丸となって対応しなければならない状況となっています。事務室をセンター化し、学校から離れて行われる事務室業務が、学校教育にとってどれだけマイナスになるのか。神高教は、学校運営と教育に混乱をもたらし、教育条件を大きく後退させる「学校事務センター(仮称)」の設置に、大きく反対の声をあげていかなくてはなりません。
(藤本泰成)


教育のセーフティーネットの再構築を
  
神奈川の定時制高校をめぐる課題とその解決の方向

 神高教は、これまでの多方面にわたる教育改革のとりくみふまえ、現在定時制高校が抱えている課題の解決を図るため、06年1月の中央委員会で「定時制プロジェクト」の設置を決定しました。2月の発足から10回の会議を重ねる間、07年度教育予算要求書への意見反映、交渉参加、募集計画策定に対する意見反映、日教組関東ブロック定通教育研究集会(3月東京、9月神奈川)への参加などの行動を積み上げてきました。その検討結果をふまえて、報告を行います。

1.神奈川の定時制高校をめぐる状況と課題
-「カラ枠」問題と、受け皿の減少
 神奈川の定時制高校はここ数年大きな混乱状況にある。その要因は明らかである。すなわち、公立全日制高校の募集定員枠が適切に設定されていないため、定時制高校に進学せざるを得ない生徒が急増し、その結果、在籍生徒数の急増によって生徒指導的な諸問題が頻発していることによる。こうした現象を引き起こしている背景には、8割を超える公立全日制高校進学希望者がいるにもかかわらず、私学側の強い圧力のなかで公立全日制枠が不当に狭められている実態がある。バブル崩壊以後の経済不況の中で、県内の半数近い私立高校が募集定員を満たせず、慢性的な欠員状況(ここ数年全体で2000人程度の欠員)が続いており、その結果「カラ枠」が発生している(図表@参照)。
表@ 定時制募集定員と志願者数等(年度別)
年度 計画進学率 実質進学率 募集定員 志願者数 入学者数 定員充足率 二次不合格者 私学計画値 私学実績値 備考
1996 92.5 90.9 2,580 2,342 2,004 77.7% 1 18,500 16,328
1997 93.0 92.4 2,580 1,826 1,443 55.9% 6 18,000 17,188
1998 93.0 91.8 2,485 2,132 1,844 74.2% 2 18,000 16,022
1999 93.5 91.9 2,345 2,320 1,953 83.3% 6 18,000 15,544
2000 94.0 91.7 2,310 2,353 2,017 87.3% 0 17,500 15,740
2001 94.0 91.2 2,310 2,291 1,975 85.5% 1 17,400 15,060
2002 94.0 90.0 2,395 3,580 2,331 97.3% 13 17,300 14,654 クラス定員40名等の臨時増(当初1994名)
2003 94.0 91.0 2,345 2,524 2,095 89.3% 5 16,700 14,653 6クラス増、クラス定員35名に戻す
2004 93.8 90.7 2,435 3,479 2,383 97.9% *101 16,700 14,626 03年のクラス増を戻し、クラス定員40名
2005 93.0 90.0 2,690 3,696 2,646 98.4% 55 16,100 13,529 7クラス増、クラス定員40名,さらに二次募集で臨時増
2006 設定せず 89.6 2,745 3,711 2,724 99.2% 66 16,068 14,187 クラス定員40名・翠嵐1減、川崎2増
2007 設定せず 2,450 クラス定員35人、前年度比295人減

 また、00年から始まった「県立高校改革推進計画」によって、課題集中校の再編統合が進み学力下位層の受け皿が少なくなったこと、横浜市立の定時制数が大幅に減少したことなども、こうした事態に拍車をかけることになった。
 04年の私学協会の提訴事件を機に設置された知事を座長とする「公私立高等学校設置者会議」において、こうした事態の改善に向けて公私の協議が続いてきたが、抜本的な解決には至っていない(07年度は募集定員が4年ぶりに40人から35人に戻された)。

-新タイプ定時制で問題解決?
 一方、再編によって新タイプの定時制高校が生まれ、新たな教育実践も展開されている。しかし、人的・予算的面で十分な支援を得られているとは言い難い。そもそも規模が小さく教職員も少ない定時制高校においては、新タイプ校の大きな魅力である多様な選択科目を中心とするカリキュラム編成には限界がある。
 神奈川の再編計画では、3部制を中心とする多部制の定時制高校は構想されていないが、新タイプの高校が全て単位制で運用されていることが特色のひとつになっている。総合学科を中心とする多様な選択制と単位制は、定時制高校に進学してくる生徒像の変容に沿った改革であるとともに、専門学科高校の改革という視点から発想されてきたものであるが、はたして神奈川の新タイプの定時制高校がその役割を担うことができているのかは今後検証していく必要がある。

2.定時制高校の生徒像の変化
-「働きながら学ぶ」生徒の減少
 序列化された日本の高校のなかで、定時制高校はいわば最後のセーフティネットの機能を果たしてきた。かつては勤労青少年の学びの場であった定時制高校もすっかり様変わりして、いまや多くは全日制高校へ進学できなかった生徒たちの受け皿になっている。
 教育研究所が、06年7月に県立高校定時制在籍者を対象に調査したデータ(「ねざす」38号特集「定時制高校生の学校生活と仕事に関するアンケート調査」図表AB参照)よると、「職に就いている」生徒60.0%のうち、「正規社員」の占める割合は7.5%、「アルバイト・パート」86.0%で、「無職」は37.8%となっている。85年に定時制教研が実施した同様の調査では、「正規社員」が45.1%、「アルバイト・パート」47.7%、「無職」20.6%で、この20年間の間に「働きながら学ぶ」という実態が大きく変化している。

図表A 職についている生徒の割合
















図表B 職についている生徒の雇用形態












-5人に1人が中退の現実
 また、中退率も全日制に比べると、きわめて高い。これは県教委の調査であるが、05年度の県立全日制高校の中退率が1.6%、定時制が16.28%となっている。定時制では入学した生徒の約5人に1人弱が学校を去っていることになる。
「勉強したいが経済的な事情で全日制に行けない者、外国籍で勉強したい子、まじめだが学力がない子、年配の人、障害を持った子、不登校の子、全日制の退学者、全日制の多人数・集団的・画一的教育になじめない生徒が学ぶ場」(「ねざす」34号)としての定時制高校、そして少人数でアットホームな雰囲気を持っていた定時制高校が、今大きく変質してきている。

-アットホームな雰囲気から管理へ
 特にクラス増、クラス定員増が続いたここ数年の状況は、定時制高校が「課題集中校化」してきているといえる。「ねざす」アンケート調査も分析しているように、93年、98年調査では、「定時制の良さ」に関してもっとも支持の高い項目は、「校則がきびしくない」で40%を超えていたが、今回の調査では30%を切っている。教育現場が生徒増の状況に対応して否応なく生徒指導に管理的手法を選択せざるを得ない状況にあることが反映している。

-居場所をなくした生徒たち
 こうした「荒れた」状況になりつつある学校のなかで、特に在籍数の多い学校では、学校や教室の中に居場所を見つけられない生徒や授業が成立しない状況に不満を持つ生徒も増えている。「ねざす」アンケート調査に学校生活に「大変不満に感じている」(回答者の5.9%)生徒の記述一覧が収録されているが、教員や周囲の生徒に対する不満が半分を占めている。「大変満足」「どちらかといえば満足」と感じている生徒も半数近くはいるが、その記述から現在の定時制のきびしい現実が垣間見える。

■前期再編校
・川崎(フレキシブルスクール)
・神奈川総合産業(総合学科)、
・厚木清南(フレキシブルスクール)
・小田原(単位制普通科)
■後期再編校
・磯子工業(総合学科・単独再編)
・向の岡工業(総合学科・単独再編)
・平塚商業(総合学科・単独再編)
・大秦野(総合学科)
・湘南(単位制普通科・単独再編)

3.今後の改革の方向性
■基本的視点
@小規模散在を基本とした学級減、学級定員減
 何らかのかたちで仕事に就いている生徒が多数を占め、外国籍の生徒やリカレント生が一定数いる状況を考えると、職場・自宅と学校が接近していることが望ましく、小規模でも県下全域に散在していることが重要である。
A公立全日制枠の拡大(私学枠の適正化、計画進学率の引き上げ)
 全日制枠が拡大された結果として定時制の縮小が起きることよりも、不本意入学の是正(04県調査全日制不合格者で入学23.2%、05調査20.5%)を優先させる。
B奨学金制度の充実等、経済的課題を抱える生徒への支援策の充実
・高等学校奨学金20,000円(原則返還一部、免除規定あり)の免除要件の緩和。
・教科書・給食費補助(国庫負担廃止、県費負担06年度予算は前年度とほぼ同額)の申請要件の緩和。
C多様な生徒に対応した自己解決能力を育てるカリキュラム開発・編成の推進
・基礎学力育成のためのプログラム策定、三修制、定通併修、インターンシップ、学外単位の認定、学校設定教科・科目の導入、高校卒業認定試験等による単位認定制度等の活用
・全学年を通したキャリア教育の策定とキャリアアドバイザー(06年度23人を10地域配置)の定時制単独配置(複数の定時制の兼務でも可)
・労働者としての権利や労働関係法の学習プログラムの策定
D学習集団の小規模化の工夫
・小集団学習、多クラス展開、選択制の導入などによる学習集団のさらなる小規模化を検討する(特に1学年)。
Eスクールカウンセラーなど教育相談体制の充実
・定時制単独配置か複数校での兼務の実現。(06年度配置35人−前年度比4人増)
F人事異動の活性化
・定時制異動希望者が少ない。新採用、再任用、臨任、非常勤でやりくりしているのが現状。教職員の高齢化も進行している。 
G「居場所」機能の充実
 これまでの定時制の「良さ」は、アットホームな雰囲気のなかで生徒の自立を支えてきた面が強い。生徒にとって学校は学びの場であるとともに、生活の場、相互交流の場でもある。他人とのコミュニケーションが不得手な生徒が多い定時制高校においては、この機能をさらに高める必要がある。

■緊急の課題と対応策
@クラス減とクラス定員減→設置者会議、協議会への意見反映(陳情書、新聞意見広告)
A生徒指導的問題の解決→校内体制の構築と人的予算的面での具体的支援策の要 求
B人事の活性化→人事異動要綱の見直しのための組織内合意形成
C新タイプの定時制高校の条件整備→施設・設備予算の拡充と定数・非常勤時間の拡充など)
Dカリキュラム改革→定時制の生徒実態にあったカリキュラムづくり

■中期的視野での検討項目
@新たな定時制像の検討
A多様な生徒に対応するカリキュラムづくり
B施設設備の充実
C学校外との連携・協働による技能訓練と進路保障(進学を含む)→職場、NPO、自治体、企業、地域などとの連携
D併置校の課題の解決

「できる子」のための教育改革でなく
 「ゆとり教育」批判に対する対応として、現在進められている教育改革は、エリート主義、競争主義を前面に押し出すものになっている。ここ数年の文部科学省の教育予算を分析してみると、毎年増額されているのはスーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)やスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELH)など、理科教育や英語教育等に特化した特別な高校への傾斜的な予算配分である。そこには、「できない子ども」にこれ以上教育予算をかける必要はない、限られた教育予算は「できる子」にこそ振り向けるべきだ、という教育改革の「本音」が透けて見える。

地域格差と所得格差の中で
 一方、格差社会の進展は教育に深刻な影響を及ぼしはじめている。都市部を中心に経済的課題を抱えた家庭の数が急増し、高校の学費免除認定者数が増えている。都立高校では、授業料の全額免除者数が05年度には4年前の1.5倍に増え、10人に一人が申請している計算になるという。
また、文房具や給食費の公的援助を受ける就学援助率の地域格差も著しくなっている。これも東京の例だが、比率の低い千代田区の6.7%に比べ、最も高い足立区は47.2%と7倍もの差がある。この数値は、教育における地域格差と所得格差が密接な連関を有していることを示している。

定時制の課題を最優先に
 全国一斉学力テストの実施や習熟度別授業の導入など、「できる子ども」への支援策が進む一方で、家庭や学校から疎外された子どもたち、充分な教育支援を得られない子どもたちは社会のなかで「居場所」を失いつつある。「自己責任」という名でそうした子どもたちを切り捨て、「トライ・アンド・エラー」を許さない「不寛容」な社会が出来上がりつつある。まさに、社会の2極化が進行し教育のセーフティネットが崩壊の危機にさらされている。
 定時制高校に進学してくる生徒たちこそ、まさにもっとも「セーフティネット」が必要な存在である。いま、神奈川では、教育政策の失策を定時制高校の教育現場と生徒たちに転嫁する状況になっている。定時制高校の課題解決は神高教の教育運動の最優先の課題といえる。
定時制プロジェクトメンバー(06年2月〜12月)

横浜翠嵐分会
平山 泰子  田上 英輔
神奈川工業分会
中野 和巳
湘南分会
金井 真澄
茅ヶ崎分会
井関 茂明
厚木清南分会
前田 洋史
神奈川総合産業分会
中野渡強志
本部担当
飯川 賢



日教組定時制・通信制教育研究集会報告
定時制・通信制の未来を探る
 1月26・27日の両日、奈良市で日教組定時制・通信制教育研究集会が開催されました。この集会は、全国の定時制・通信制の教育実践を交流することで、課題の共有や問題解決の方途を探ろうとする目的で開かれています。集会は全体会と分科会(定時制・通信制)で構成され、それぞれの分科会では活発な論議が展開されました。

 神高教からは、現在新校準備が進められている通信制独立校の現状と課題について、平沼分会の小島さんと福留さんがレポートしました。定時制の課題については、1昨年に結成された「関東ブロック定通教育研究協議会」(関東地区の5高校組織が参加)が、関東地区の定時制の実情をふまえた「今後の定時制教育のあり方について」というレポートを中野が発表しました。ここでは定時制分科会を中心に報告します。

全国的に進行する統廃合
 神奈川では、全日制募集枠策定の失敗から定時制に志願者が集中し多くの課題が噴出していますが、関東を含め全国的に進行しているのは定時制の統廃合です。生徒減に対応して全日制の再編統合が進んでいますが、その波は定時制にも及んでいます。特に、他部制定時制高校(3部制・2部制)など、新タイプの定時制高校が次々と開校された結果、単位制、他部制ゆえのさまざまな課題が生じています。教職員の多忙化や連携の不足、生徒間の軋轢、併設されている全日制との課題など、他部制特有の問題や課題が噴出しています。

定時制の変化に対応して
 かつて勤労青少年の学びの場であった定時制高校は、進学してくる生徒の実態によって変化してきましたが、各県からのレポートには、「全日制」的な雰囲気が強くなり、かつての「定時制」的な良さが失われてきていることへの危機感が強く表明されていました。また、現在各県では定通手当の見直しが進んでおり、各県のおかれた財政状況や単組の力量によってかなり幅広い決着内容となっています。神奈川は全国的には早い段階で決着しましたが、全国からは何とか「神奈川のレベル」を勝ち取りたいという声が多く聞かれました。定通手当の問題とともに、国庫負担から一般財源化された給食費や教科書補助の財源が一気に削減された県もあり、これまで定時制が果たしてきた「公教育としてのセーフティネット」が崩されてきている実態が報告されました。
 神高教は、「定時制プロジェクト」を立ち上げて、神奈川における今後の定時制教育のあり方についてまとめました。その中で、格差社会が進行する中で定時制に集う生徒たちの自己実現を保障していくためには、教育の枠組みを超えて社会的セーフティネットを構築していく必要があることを提起しています。奇しくも、今回の全国集会の場でも各県から同様の意見が出されていました。

青少年の自立のための公教育を
 「関東ブロック定通教育研究協議会」のレポートも、こうした格差社会拡大のなかで、これまでの定時制教育の実践をふまえながら、生徒実態の変化に対応した新たな定時制教育の可能性について提起しました。高校改革が明確に「エリート教育」にシフトしている中で、社会から排除されかけている青少年の自立のために、公教育としての定時制教育の重要性を主張したものですが、これは定時制教育だけに固有の問題ではなく、全ての高校教育につながる課題だといえます。
 (神奈川工業・定分会)



シリーズ「共生への道」(8)
学校を「偏見」克服の場に
 以下の引用は、 昨夏横浜で開催された「全国在日外国人生徒交流会」で語られた外国人の子どもたちの声である。

 「ニュースとかで、『金〜容疑者』とか『ペルー人の〜』とか外国人であることが強調されるけど、日本人の場合は名前だけとかで扱われる。そういうマスコミ報道はおかしい。」
 「南米=事件、というイメージがある。レストランでも誰かにじっと見られている」


 一部の外国人が犯した犯罪で、外国人=犯罪者のように見られてしまう。日本人が犯罪を犯しても、日本人=犯罪者とは見なされない。この違いはどこから来るのか? 生徒が鋭く見抜いているように、外国人の犯罪の場合は、国名や、「外国人風」「東南アジア系」といった形容詞が付けられ、外国人であることが強調されて報道されるが、日本人の犯罪の場合は、「日本人の○○が殺人事件を起こした」とか、「日本人風の男が犯人らしい」という表現には出会うことはない。こうして、外国人は犯罪者が多い、という誤ったイメージが作られる。
 昨年暮れの焼津市での母子殺害事件では、市内に「ブラジル人は怖い」という風説が流れ、根も葉もないブラジル人による女児暴行事件の噂まで広がったらしい(12月30日毎日新聞静岡版)。
 流言飛語による被害といえば、1923年の関東大震災時の朝鮮人虐殺事件が思い起こされる。当時の小学生たちの作文が、横浜市内の何校かの小学校で発見された。昨秋の神高教フィールドワークでその震災作文を読む機会があったが、それらの作文には、朝鮮人虐殺がまるで当然のように描かれ、虐殺を批判的に書いたり被害者の朝鮮人に同情的なものがほとんどないことにとてもショックを受けた。
 「偏見」を作り出しているのはマスコミ報道だけではない。学校教育の責任も大きい。今の学校は、関東大震災の時と同じ過ちを犯さないと自信持って言える状況にあるのだろうか? 

 「ペルーには靴あるの?って聞かれる。ペルーって山の中って思われてる。マチュピチュとか。」「貧しいペルーのイメージからか、先生に『ハサミあるの?』と聞かれた。」「なるべくサッカー、サンバ、アマゾンの話はしないようにしている。都会の写真とか見せると『あれ、裸で生活していないの?』と言われる」

 これらも、交流会での外国人生徒の発言であるが、ペルーといえば、世界遺産のマチュピチュのみに触れ、ブラジルといえば、サッカー、サンバ、アマゾンしか教えない。これでは、偏見を増幅するだけかもしれない。そういえば、私自身も、マニラのゴミの山の写真を見せた時、「フィリピンはこんなきたない所だけじゃない」と、フィリピンをルーツとする生徒に抗議されたこともあった。

 「偏見」は「共生」の前に立ちふさがる大きな壁である。外国人というだけでアルバイトを断られる。外国人というだけで犯罪者扱いされる。震災作文を書いた80年前の小学生たちの視線と同じ視線に、現代の外国人の子どもたちがさらされているとしたら……。
 「偏見」は実像とは違う偏ったイメージである。「偏見」から解放されるには、実際の姿を知ることである。学校の役割は、マスコミ報道に踊らされることなく、ありのままの姿を伝えることであろう。そして、一番いいのは実際に外国人とつきあってみることである。友達になることである。
 
 「日本人の友達とこういう話をすることはない。ニュースでは韓・中・日もめているけど、こういう集まりに日本人の子らが来てくれるのを知ってうれしい。この国で生きていけるのがうれしい。」「たった2日間だったのに、ものすごく長い時間会っているいるような感じがしました。それは国や文化が違っていても、本音を語らい、お互いを知り合うことができたからだと思います。皆、離れていても、今回出来た「キズナ」が私達をつなぎとめてくれるから、一生忘れない思い出になると信じています!」

 外国人生徒と日本人生徒が集う交流会で、心を開き、悩みを打ち明け、元気になる。そして、「この国で生きていける」という自信をもらう。この場では互いの「偏見」がただされ、笑い飛ばす事ができる。今はこういう交流会が貴重な場になっているが、本当は、それぞれの学校が、名前もルーツも国籍も隠すことなく、生き生きと安心して生活できる場になればいいのだ。そこには「偏見」の入り込む余地はない。
 観念的な排外主義の主張が強まる日本社会で、学校が「偏見」の再生産の場になるのか、「偏見」を克服する場になるのか、今問われている。 (川崎分会)



天皇制自体の是非を論じよう
〜皇室の男児誕生騒ぎから〜
 12月22日、神高教本部で、第23回新しい男女共同社会をつくる集いが開催されました。藤本副委員長,川野女性委員長に続き、加納実紀代さん(敬和学園大学教員)による「『お世継ぎ』誕生とバックラッシュ」と題する講演が行なわれました。

保守化の流れの宣伝材料?
 翌23日は天皇誕生日。そして1948年、政府はあえてこの日に「A級戦犯処刑」を行い、天皇の戦争責任の清算と新しい天皇制の誕生を国民に印象づけました。そして、昨年の「お世継ぎ」誕生騒ぎもまた、保守化の流れを国民に受け入れさせようという意図があると加納さんは危惧する。

近代的ジェンダー誕生の歴史
 歴史的に見ると、「『お世継ぎ』=男子」は決して日本の伝統ではない。武士階級で家父長制が強調された江戸時代でさえ、庶民の世界では女性や末子の相続もあったという。しかし、近代天皇制となり、戦争に向かう政策として、近代的ジェンダーが構築されていった。明治天皇は、いかめしい軍服姿のご真影となって多くの男性を戦争に駆り立て、皇后の工場・病院・学校の行啓は銃後の女性像を作り上げていった。そのような時代に制定された大日本憲法・皇室典範の中で「男系男子天皇制」が確立した。小気味よい語り口調とわかりやすい資料で、近代的ジェンダー誕生の歴史が明らかにされた。

いま何故「男系男子」
 それでは、戦後新しい憲法のもとで民主的平和国家として再出発したはずの日本で今なぜ、再び「男系男子天皇制」が強調され出したのだろうか。加納さんは格差社会が進む中、不安定労働者となった男性たちに精神的な支えとしての女性が求められているという。また、家庭(女性)に福祉の役割を担わせれば、増加する年金・医療費登を削減できる。つまり、政策として近代的ジェンダー復活の考えがあると分析する。ジェンダーの象徴である皇室の男児誕生はまさしくうってつけの出来事だったのだ。

天皇制は女性に産むことを強制する
 天皇制は血統に権威の根拠を置くため、皇室の女性は子どもを産むことが強制されている。つまり、「女性天皇容認論」も決して男女平等や個人の尊重にはつながっていない。そしてなんと06年度の天皇制のための予算は175億!経済面からの天皇制の問題点も含め、「天皇制の是非」を大いに議論しよう。「さまざまなバックラッシュに負けてなるものか!」と元気づけられる講演会であった。 (釜利谷分会)



軍隊は女性にとってどういうものか
〜暴力による他者支配と、軍事国家による侵略と〜
 横須賀での米海軍兵士による日本女性惨殺事件から、1年、1月29日(月)に神奈川県民センターで「基地の街に住む私たちの平和な未来を求める集会」(主催:沖縄と連帯するかながわ女性の会)が開催されました。参加者は100人を超え、事件の意味を再度考える集会となりました。
 まず、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の冨田由美さんから、被害女性の立場からの講演がありました。冨田さんは米兵3人からレイプされた経験と、その後繰り返した自殺未遂、そして95年の少女暴行事件をきっかけに、被害を語る活動を始めた経緯などを話されました。悪いのは加害者であること、サバイバーとして軍隊は女性にとってどういうものかを語っていこうと決意するまでの気持ち、その勇気を思うと、基地も軍隊もない社会をつくる責務を強く感じます。
 次に「フォーラム平和・人権・環境」の副代表清水澄子さんによる「軍事化とジェンダー」についての講演が行なわれました。軍事基地のあるところ、女性は暴力に脅かされること、男性支配を中心とした家父長制における女性差別と、戦争体制(絶対服従の家父長制と暴力組織)の関係、家族を社会の基本とし「性別役割分担」に社会保障を肩代わりさせる憲法改悪の問題などが語られました。
 脱軍事化、脱暴力をめざす女性のネットワークをつくるため、身近なところから行動をおこしていくことを確認して閉会しました。 (畠山幸子)



「横須賀市民の声を聞いてほしい」人文字をつくって訴えた
「原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会」主催
 日米軍事再編の流れの中で、横須賀を原子力空母の母港にしようという動きがあります。それはたとえ軍事的行動をとらなかったとしても首都圏の中にいきなり原子力発電所ができるのと同じかそれ以上の危険性を持っています。ましてや、多くの艦載機を載せ、軍事行動のために動いていく軍艦です。それを阻止しようと、多くの市民が様々な活動をしてきました。
 その一つの活動として、住民投票で横須賀市民の意見を聞いてほしいということで、昨年末に直接請求による住民投票条例の制定を求める動きがありました。有権者の50分の1である約7,200人分の署名が直接請求のために必要ですが、神高教も協力した署名は、集めた41,591人分のうち選挙管理委員会から、37,858人分が有効と判定されました。必要な署名数の5倍以上にあたります。
 しかし、その後も市長からは住民投票に対して消極的な発言が多く聞かれる中、市議会でも、住民投票に消極的な議員が多いという情報が伝わってきました。そこで、その住民投票条例を審議する市議会開催の直前にあたる2月4日、横須賀のヴェルニー公園で、集めた署名数を表す人文字をつくって、住民投票条例制定を訴えました。
 当日はヘリコプターで空中写真を撮る新聞社もあり、多くのマスコミがとり上げましたので、新聞紙上でご覧になった方も多いと思います。 残念ながら、現時点では市議会で否決されてしまったため、住民の意見を直接反映する、ということはできませんでした。しかし、今後に予定されている市議会選挙など、市民の意見を聞く姿勢を持った候補者かどうかは、投票する人を決めるひとつの大きなポイントになるでしょう。  (飯川 賢)