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高校神奈川 No.568

2009年7月27日

大会あいさつ

執行委員長  園部 守 

 神高教第69回定期大会にご参集の代議員のみなさん、学期末の厳しい日程の中でお集まりいただきありがとうございます。
 また、日教組中村中央執行委員長、連合神奈川柏木事務局長、県労連加藤議長、県公務労協佐藤議長をはじめとする各界のご来賓のみなさま、本日はご多用中のところ私たちのために激励にかけつけてきていただいたことに、本定期大会参加者を代表して深く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 さて、大会の開会に当たり執行委員会を代表し、執行委員長としての情勢認識や所感をのべ、大会討議の素材としていただければと思います。時節柄軽装でのご挨拶をお許し願いたいと存じます。

 いささか古い話からご挨拶を始めたいと思います。
 「今日も机にあの子がいない」この言葉をご存じの方も多いのではないかと思います。戦後の民主教育の中で大きな潮流をきづいた同和教育はこの言葉から出発したと言われています。。
 戦後のまだまだ豊かでなかった時代、1950年代の後半、高知の海辺の町でそれは始まりました。
 不就学、今で言う不登校の子どもの家に家庭訪問に足を運んだ教師たちが、そこで見たものは、子どもを学校にやることのできないほどの貧しさであり、その貧しさの原因である「差別」でした。彼らは家庭訪問を繰り返し、地域を訪ね、保護者や地域の人々と深く交わる中で、「貧困」と「差別」の現実から深く学び、子どもや保護者・地域とともに差別とたたかい、貧困とたたかうことを自分たちの実践の中心に据えて教育活動を行ってきました。
 全国各地でのこのような教師たちの教育運動の流れは、同和教育という大きな川となって、現在に至っています。義務教育教科書無償制度、就学援助、奨学金制度、授業料の減免制度、統一応募用紙など多くの制度がこのようなとりくみからうまれました。

 子どもの14..7%、実に7人に一人が貧困状態にある、という統計をご存じでしょうか。
 様々な統計的手法をもちいてこの国の子どもたちの状況について分析した岩波新書「子どもの貧困」の著者、阿部綾さんは、子どもたちの実態に即して「格差社会」の現実を私たちの前に明らかにしてくれています。そして「貧困」が子どもの成長を阻害するきわめて大きな原因となっていることもこの本は同時に明らかにしています。
 さらに衝撃的なのは、母子世帯ではその6割が貧困状態にあること。そして、税や給付を実施したのち、すなわち所得の再分配の後、これらの層で「貧困」の割合が増えると言うことです。政府の政策が「貧困」を増加させている、ということです。これは貧困大国アメリカですらみられない、日本のきわだった特徴です。
 「母子世帯になってからダブルワークをするようになって、体調を崩したものの仕事の量を減らすことができずにいるで今後どこまで体が持つのか不安です。働かないと生活できないし・・・。」17歳から11歳の4人の子の母43歳「子どもの大学進学を控えての経済的不安。派遣のため収入の増える見込みがないので自分の老後の蓄えをする余裕がない。将来働けなくなったら、すぐ死んだ方が子どもに迷惑をかけないで済むのではないかと考える」15歳の子の母親42歳。
 世界第2の経済大国のなかでの「貧困」の悲鳴が聞こえてきます。

 私たちは今、半世紀を超えて私たちの先輩が同和教育をスタートさせたのと同じ状況を目の前にしています。

 私は先日教育長との交渉の冒頭で、このことを指摘しつつ、教育行政の立ち位置を問いました。政治や行政の役割はつづめて言えば、所得をどのような優先順位で再配分するかにあります。なにを優先し、何を後回しにするかという物差しをどのようにするのか、ということです。「格差」「貧困」を自己責任であると放置し、かつて新自由主義者が声高に主張した「機会の均等」すらも保障しないという立場に立つのか、教育を「格差是正」の手段として教育を万人の権利として保障する立場に立つのか、県財政が厳しければ厳しいほど、そのことが問われています。

 ひるがえって、学校現場の立ち位置も問われています。不登校や問題行動、学業不振などに対して、教育の成果を子供の現象面だけの行動に限定し、指導に乗らない生徒、指導の効果の上がらない生徒として切り捨ていくのではなく、子どもの行動を、背景にある生活との関係で把握し、その原因を本人や家族の個別的な要因だけに帰することなく、社会的な矛盾にまで思いを巡らしながら、その現実から深く学び、子どもに寄り添う教育実践が求められています。

 しかし、私たちの教育現場は、このような実践を危うくする環境にあります。地域貢献デー、学習状況調査、挨拶一新運動、シラバス・観点別評価・生徒の授業評価の3点セットでの授業改善など、およそ現場のニーズとかけ離れた独善的な教育施策が一方的に学校現場に押しつけられ、現場は多忙を極めています。家庭訪問はおろか、気になる生徒への声かけもままならない実態が多くの学校で報告をされています。
 確かに教育をめぐる課題は日に日に新たなものが生じています。教育行政はこれらの課題に、新たな事業を興すことで対処しようとします。しかし、そのことがかえって現場の多忙化を生み、子どもや保護者と向き合う余裕や時間を奪うという皮肉な結果を招いています。大部分の課題は、新たな事業を興すことではなく、子どもと教職員が本当に向き合える余裕を作ることで解決するものだと思います。
 本組合でも何回か講師をお願いした宮台真司さんは、近著「日本の難点」の中で「若者のコミュニケーションのフラット化」を指摘し「コミットメント」すなわち「深い関与」の不足を指摘しています。そして、教育の現場は「コミットメント」にこそその意義があり、システムやマニュアルに頼ることなく学校における「生活空間」の回復こそが求められている、と述べています。傾聴に値する言葉だと思います。
 「今忙しいから後で」という言葉は、生徒たちにではなく、仕事を降らせてくる文科省、県教委や管理職に対してこそ発するべき言葉だと思います。
 不要不急の事業や報告の削減に全力を挙げるとともに、職場での自分たちの働き方を検証しつつ、「コミットメント」のための多忙化解消をすすめたいと考えています。

 もう一つ職場の課題に触れます。
 職場では「起案」とか「決裁」とか、10年前なら学校になかった行政用語が飛び交っています。一部の管理職が、あたかもこれまでの学校の学校運営システムが機能不全であるかのように、中途半端な「行政流」を振りかざして教職員の多忙化とモチベーションの低下を招いています。もちろん私は10年前の学校運営システムを金科玉条のように守るべき、と考えているわけではありません。しかし、今、この学校現場でなにが必要か、なにが不要かという吟味なしに、自己評価の下書きや調査書の下書きの「てにおは」に朱書きを入れている管理職の姿は滑稽です。ここでも、何か変えなければ仕事をしたことにならない、という行政の予算編成のテクニックが、テクニックとの認識なしに学校現場にもたらされ混乱を生じています。子どもたちをまっすぐ見るよりも、県教委が評価する、形ある業績を作ろうとする、そんな管理職の姿勢では職場のモチベーションは低下するだけです。
現場担当者の能力と判断を極限まで引き出すことが民間企業、とくに創造的な業種では求められており、社員のモチベーションを引き出せない管理職は会社そのものを潰しかねません。それは学校でも同じことだと思います。
学校運営のあり方、人事制度のあり方などを不断に検証しつつ全教職員がモチベーションをもって参加できる学校作りをすすめる必要があります。

 次に私たちの生活を巡る課題について今後の展望にふれたいと思います。
 08確定闘争では年来の要求であった所定内の労働時間短縮を実現しました。しかし、その後財政危機を背景とした異例の3%カットや、中央に追従した一時金の0.2ヶ月凍結を、カット率の圧縮や09確定交渉にむけた当局の姿勢を確認させる中で、受け入れることとなりました。この間の経過や、今秋の確定闘争に向けた方針については、後ほど書記長から提案しご議論いただきたいと思います。ここでは執行委員長として秋の確定闘争に向けて全力でたたかう決意を明らかにすることにとどめたいと思います。

 この間大会オルグで職場を回らせていただきながら、職場の皆さんの賃金・生活闘争に対する閉塞感というものを強く感じました。

 それを踏まえつつ、私たち公務員の運動をどのようにすすめるか、あるいはどこまですすんでいるかについて若干所見を述べてみたいと思います。
 その第1はいうまでもなく労働条件決定システムとしての労働基本権の回復です。各県独自の賃金カットや一時金凍結をみれば、人勧制度がすでに労働基本権制約の代償措置としての機能を完全に失っていることは明らかです。私たちは教職員を含む公務員全体に労働協約の締結権を回復することで、法的に労使対等の立場での労使交渉を実現する必要があります。この点についてはこの間、日教組、公務労協等のとりくみの中で一定の展望が開けつつあり、更なる運動の強化が求められています。

 第2は、公務労働に対する正当な評価の確立です。この10年間、とりわけに小泉政権以後の6年間、「小さな政府」論が横行しました。その結果公共サービスの破壊が進行することでこの国のセーフティネットはズタズタにされるとともに、公務員については行政改革の名の下に、労働条件の悪化が進められました。これに対しては、これも日教組・公務労協を中心に「公共サービス基本法」の制定運動がすすめられたことで、見直しの機運が生じつつあります。私たちは制定された「公共サービス基本法」を手がかりとしながら、セーフティネットの再構築にむけて運動をすすめ、同時に公務労働に対する正当な評価の確立をすすめなければなりません。

 しかし、この2点だけでは、私たちの労働条件の改善への展望は開けないと考えます。
 「格差社会」の深刻化とともに、私たち公務員バッシングと公務員の労働条件の低下がすすんだことを忘れてはなりません。中間層が崩壊し、労働者の生活が不安定なものとなることは、公務員の労働条件を下へ下へと押し下げる力として働くことを銘記する必要があります。
 逆な言い方をすれば、中間層、すなわち普通に働くことで、特に豊かではなくても安心して生活をすることのできる人々が多数を占める社会、すなわち「労働を中心とした福祉型社会」を再建することが、私たち公務員の労働条件の改善の最重要のポイントだと考えます。
 そう言うと迂遠な展望と思われるかもしれません。深刻な経済状態が当分続いていくことも想定されます。しかし、今この世界的な不況をもたらした新自由主義は大きく後退しつつあります。ここをチャンスとしてパラダイムを作り替えられるかどうか、さらに言えば、そのような社会を創る中で私たち労働組合がどのような役割を果たすかが問われているのではないかと思います。
 労使関係の中で一つ一つの課題や闘いに全力でとりくむ決意とあわせて、非正規雇用労働者も含めた全ての労働者のとりくみを強化していくことが自らの労働条件改善に必要不可欠であることを確認しておきたいと思います。

 そのような思いと、冒頭述べた「子どもの貧困」への思いを重ねながら、執行委員会としては、組合員の皆さんにカンパを呼びかけつつ、闘争救援資金、臨時闘争資金両特別会計を取り崩し、連合「雇用と就労・自立支援カンパ」と日教組「子ども救援カンパ」に応えるとともに、3年間を時限とする、非正規労働者等への支援事業と、経済的に困難な生徒への直接支援事業を含む「地域・教育支援事業」を実施することを本大会に提案しています。是非ご検討をいただきたいと思います。

 国民の信任を得ないまま3代の総理大臣が、居座り続けています。3分の2条項を拡大悪用して、海賊対処法をはじめとする多くの悪法が成立しました。このこと一つをとっても民主主義の空洞化は明らかです。しかしその中で、高校無償化法案、教員免許法案、教員数拡充法案、教育環境整備法案など、本日もお見えいただいている神教組出身の那谷屋参議院議員をはじめ日教組組織内議員団日政連の議員の皆さんの多大なご尽力で参議院を通過するという成果をあげています。数ヶ月のうちには実施される総選挙では、この成果を現実のものとして結実するため、政権交代はなんとしても成し遂げなければなりません。
 政治に自らの理想を託することは重要です。しかし、同時に政治は現実の選択です。新たな現実を実現できなければ、現状に甘んじることを選択する以外にはありません。私は政権交代が必ずしもバラ色の未来を切り開くものとは思っていません。しかし、わたしたちは当面、現実の選択としてなんとしても政権交代を実現することが重要だと思います。
 
 最後に組織拡大について触れます。今年度の第1回の分会代表者会議の冒頭の挨拶で、私は、今年の新規加入者数の目標を1000名としたいと、宣言しました。非常勤・臨任・再任用を含むとはいえ、無謀な数と思われた代表者の方も多かったのではないかと思います。現段階でほぼ50%を超える達成率となっています。若い組合員の皆さんが積極的に組織拡大にとりくんでいただいてる姿に、目標達成に向けた手応えを実感しています。

 この10年間、新自由主義哲学の蔓延の中で、競争主義・自己責任が喧伝された結果、労働者一人ひとりがバラバラにされ、その結果職場の一体感が失われモラルが低下し、食品や建築の偽装事件につながったという反省が民間企業からも出始めていると聞きます。私たちは競争主義や成果主義などと対極にあるものとしても、「共生」「共助」を旨とする労働組合を一層大きなものとしていくことが求められています。

 神高教は昨年結成60周年を迎えました。ここに至る道は決して平坦ではありませんでした。とりわけ1960年からの数年間は組織分裂攻撃の中で、耐えに耐えた時代もあったと先輩から聞いています。「犬と執行部は校門より入るべからず」との立て札がたてられた学校もあったときいています。職員会議で発言した新採用の女性教員が、「女と子どもは黙っていろ」と第2組合の教員から怒鳴られた姿を私は忘れていません。その中から諸先輩たちのさまざまな努力の中で、現在組織人員全国2位の高教組となっています。
 時代は大きく転換し始めています。私たちは、私たちだけでなく私たちの傍らで苦しむ人々、私たちの後に続く人たちのためにたゆまずに組織の拡大強化と運動を続けていかねばなりません。
 今日明日の議論がそのための糧となる実り多きものであることを期待して執行委員会を代表してのご挨拶といたします。よろしくお願いします。


大会宣言

 私たち神奈川県高等学校教職員組合は、本日、第69回定期大会を開催し、この1年のたたかいを総括するとともに、2009年度の運動方針を決定しました。
 米国金融市場の混乱に端を発した世界的な不況は、日本経済にも深刻な影響もたらし、雇用・賃金をめぐる情勢はきびしさを増しています。小泉帯造改革のもとで広がった格差と貧困のなか、新自由主義的な政策のひずみは社会的弱者に向けられ、生存権すらおびやかされる情況が日本社会に蔓延しています。私たちは、不況に便乗した賃金切り下げの動きに毅然として対峠しつつ、非正規労働者への支援、とりわけ学校現場における臨任・非常勤の仲間の待遇改善・権利拡大をめざして、いっそうの力を注いでいきます。
 セーフティネットの崩壊がすすむなか.「子どもの貧困」が切迫した標題となっています。すべての子どもに学習権を保障し、教育の機会均等を実現するためにも、教育予算の拡充や公立全日制高校の定員拡大を求める運動は、その重要性がますます高まってきています。私たちはこれまでのとりくみを強めると同時に、経済的困難を抱えた生徒への直接支援事業を今大会で決定しました。
 一方、教育的効果を見出すことができず、学校現場に多忙化と徒労感だけをもたらしている教育施策に対し、事業の廃止・見直しを求めるとりくみを強化していきます.シラバス・観点別評価・学習状況調査をはじめ、学校の実情を無視して、県教委が押しつけてきた一律一斉の諸施策は、多忙化解消の観点からも抜本的に改革される必要があります。
 職場全体の共通理解を得ようとすることなく、独善的・強権的な学校運営を行う校長が増え続けています。私たちは、全教職員が参加と共有の実感を持てる、職員会議を中心とした職場づくりをめざして、協力・協働の民主的な学校運営をひき続き追求していきます。また、それを実現するためにも、新規採用者の組合加入を積極的によびかけ、組織の強化拡大を展開していきます。
 09年4月から教員免許更新制が実働化するなど私たちの働き方をめぐる制度的環境が急速に変わろうとしています。私たちは免許更新制の廃止を追求するとともに、公務員の労勧基本権回復への第一歩として、労働協約締結権の確立に向けてとりくみます。 国政においては、「改憲手続法」による改憲発議が可能となるまで1年を切りました。自衛隊は国会での事前承認すら得ることなく、ソマリア沖へ派兵されています。有事体制のなし崩し的進行を許さず、憲法理念を活かした政治を実現させねばなりません。与野党逆転を眼前にしたいま、私たちは幅広い護憲勢力の拡大につとめていきます。
 神奈川のゆたかな高校教育を創りだし、生徒が希望を持って生きていける平和・人権・共生の社会の実現をめざし、今定期大会で決定した方針にもとづき、全力でとりくむことを宣言します。

2009年7月11日
神奈川県高等学校教職員組合
第69回定期大会