県立高等学校通学区域に関わる県教委方針についての神教協見解
2003年7月3日
神奈川県教職員組合協議会
議長 小中儀隆

 2003年7月3日の神奈川県議会文教常任委員会において、教育委員会は県立高校の学区を撤廃する方針を明らかにしました。私たち神奈川県教職員組合協議会は、神奈川県における全日制普通科公立校の学区は何度か改編・分割されながらも、50年以上にわたり県民に定着してきた制度であることを考えると、以下の点で、今回の学区撤廃の方針は問題が多いことから、再考されることを強く求めるものです。
  1. .入学者選抜制度・学区検討協議会の第2次報告で示された「想定される課題」への検討と対応策が不十分です。
     2003年2月20日に出された、神奈川県公立高校入学者選抜制度・学区検討協議会の第2次報告「今後の学区のあり方について」では、学区を拡大・撤廃した場合に想定される課題として、「受験競争の激化の懸念への対応」「学校の序列化の懸念への対応」「近隣の高校の入学を希望する生徒に対する影響への対応」「地域とのつながりの希薄化の懸念への対応」「中学校の進路指導への影響への対応」など5項目について検討しその対応策をとることを示しています。その対応がきわめて不十分です。
     特に、次の点で対応策が不十分であると考えます。
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    「一人一人の個性がより一層生かされる制度として改善」した新しい公立高校入学者選抜制度がまだ完全実施されていないこと。
    A 「県立高校改革の着実な進展が不可欠」としているが、前期計画では見直し、修正が行われ、後期計画も不明確であり、依然として学校の序列化は解消していないこと。
    B 計画進学率が3年連続で94%に止まっており、実質進学率は90%台という状況が続いており、全国的にみても低く、受験競争が緩和されていないこと。
    C 「中学生の進路希望に基づいた」定員策定の方法が不明確で、近くの高校で学びたいとする生徒の希望が生かされなくなることが懸念されること。
    D
    地域での中高連携の教育活動がすすんでいる中、「地域に開かれた高校づくり」の促進を阻害する懸念があること。
    私たちは引き続き学区を拡大・撤廃した場合に想定される課題の対応策を継続してすすめることを要望します。

  2. .学区に関わる方針については、県民から意見募集をするだけでなく、県民フォーラムを県内各所で開催するなど、広範な県民の意見を聞いてから最終決定すべきです。

     最後に、現在の学区が、「県立高校改革推進計画」の進捗によって学校数にアンバランスが生じることは事実です。こうした観点から、地区の状況を勘案しながら量的なバランスを取っていくことが必要です。また、隣接学区の問題があるのも事実です。
     私たちは、学区現行学区について改善が必要なことを否定するものではありません。
    しかし、学区撤廃によってもたらされる事態を想定すると、学区撤廃には慎重であるべきだと考えます。学区問題は、単なる学区の線引きの問題だけではなく、その影響等を総合的に検討するとともに、県民的な議論をすすめ合意形成を図っていくことが必要です。また、学区の検討は、神奈川の中学・高校教育の課題を将来的に解消していく方向性を持つべきだと考えます。そのためには、希望するすべての子ども・青年に高校教育を保障するとともに、入学後の生徒の高校教育を充実させるよう求めます。
以上