さる4月28日、政府は教育基本法の「改正案」を閣議決定し、衆院に提出しました。連休明けから国会審議が始まるものと思います。私たちは「教育の憲法」として、戦後教育の基本方針となってきた教育基本法を「変える」のではなく「活かす」努力が必要として、改悪反対の行動を積み上げてきました。今国会は6月18日までとなっていますが、会期延長で成立をもくろむ与党勢力もあることから改悪阻止に全力でとりくみたいと思います。
1955年、憲法改正を党是とする自民党が結党されましたが、同年の暮れには当時の文部大臣が「教育基本法には、個人と世界の中間に立つ“国”という観念がちっともない」と文部広報に載せます。爾来50年、憲法「改正」の前段として教育基本法「改正」がもくろまれるわけですが、この間キーワードは一貫して「愛国心」であり、「公共の精神」でした。
文部科学省は、今回の「改正」案を「教育改革を進めていく上でのキックオフ」と位置づけ、施策・制度の見直しを図ろうとしています。現教育基本法が11条からなるのに対し、「改正案」は18条となっていますから、加えられたものが多くあります。たとえば小・中・高等学校教育については何も触れられていないのに、大学と幼児期については条が起こされています。また公立学校については触れず私立学校の条が起こされています。条で削除されたのは、第5条の「男女共学」です。現行法では「男女は、互いに敬重し、協力しあわなければならないものであって、教育上男女の共学は、認められなければならない」となっていますが、文科省は「時代的役割が終わった」と「改正案」では削除しました。新たに「改正案」第二条(教育の目的)3で「正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。」としています。男女平等の理念を具体的に実現していく制度上の手段としての男女共学なのに、「役割が終わった」として削除するイとは何でしょうか。戦前の旧制高等学校が男性しか入学を認めていなかったし、中等教育においても男子の中学校と女子の高等女学校は修業年限にも差がありました。たしかにこのような状況はなくなりました。しかし「男女共学」は男女の単なる協力にとどまらず、実質的な「平等」を希求しているものです。機会の均等だけでなく、教育内容の平等(1994年の高校家庭科男女共学など)として発展させてきました。家庭科にとどまらず、どの教科・科目でも共学化に道を開くことが求められています。「男女共学」を削除することなく男女平等の理念を豊かにすることが必要です。
一方現行第4条(義務教育)でその1項に義務教育年限が9年と明記されているのが削除されていますから、幼稚園や高校を義務教育化する道をつけたという見方も出されていますが。果たして。むしろ飛び級などを広く認め、格差拡大が懸念されます。
日教組はこの「改正案」については反対し、衆参両院に「教育基本法調査会(仮称)」の設置を求めています。拙速に結論を出すのではなく、まず改正の是非について憲法や子どもの権利条約、国際人権規約などの国際法との整合性をはかるため慎重かつ徹底審議を行い、国民的論議を喚起しようというもので、請願署名にとりくんでいます。私たちも神教組とともに他の団体と実行委員会を結成し、この署名をひろげ、改悪をゆるさない運動に全力でとりくみます。
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