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横浜市教育委員会の「中学校歴史教科書採択」に関する神高教見解

横浜市教育委員会の「中学校歴史教科書採択」に
関する神高教見解

 8月4日、横浜市教育委員会において2010・2011年度に使用される中学校教科書の採択が行われ、市内18の採択区のうち8区で「新しい歴史教科書をつくる会」が編集した自由社版歴史教科書が採択された。
 まず今回の教科書採択は、以下のような点において、きわめて不公正で問題の多い採択と言わざるをえない。
 教育委員6人の無記名投票で採択が行われたこと。従来公開されてきた採択が無記名投票とされ、どの委員がどのような理由で投票したのか明らかにされないまま、教科書が決定された。
 他教科では「教科書取扱審議会」の答申に沿って、現在使用中の教科書が採択されたにもかかわらず、歴史教科書のみが答申を無視して採択されたこと。
 歴史教科書の採択候補は7社あったにもかかわらず、自由社版のみを現在各区で使用中の2社と比べて、採択していったこと。

 教科書は、教職員や保護者・地域住民の意見が十分に反映された公正・透明な「開かれた」システムにおいて採択されるべきである。しかしながら横浜市教育委員会は、あえて公開の方針を逆行させ、歴史教科書のみ審議会答申を無視して自由社版に変更した。
 また、2011年度には新学習指導要領に準拠した新しい教科書の採択が行われるため、指導要領の移行にともなう今回のような採択においては、現在使用中の教科書が継続使用されるのが通常である。にもかかわらず横浜市教委は、版元が扶桑社から自由社に変わっただけの「つくる会」教科書を「新規参入」と位置づけ、恣意的な方法で自由社版教科書を採択した。
 今回の採択が、一部教育委員の露骨で極端な政治性が優先されたことは明らかである。
 「つくる会」の歴史教科書は、アジア諸地域に対する日本の侵略を、欧米帝国主義からアジアを「解放」するための戦争と位置づけている。日本の植民地支配や軍政を肯定的に扱い、近代日本の戦争を正当化する記述が随所でなされている。また、前近代においても「天皇神話」を歴史的事実と混同させるような構成をとるなど、多くの教職員や保護者がもとめる「たしかな歴史認識」とは大きくかけ離れた内容になっている。
 横浜市教委は来年度以降、採択区を市内全域で単一にすることを方針化しており、私たちは、歴史的事実を歪曲し、国際社会の常識に反した教科書が、横浜の子どもたちに押しつけられる事態を強く危惧する。
 私たちは、歴史的事実に基づく教育実践にいっそうとりくむ決意を強くするとともに、横浜市が学校現場や市民の声に耳を傾け、公正・透明な採択制度のもと、国際社会を生きる子どもたちにとって真にふさわしい歴史教科書を検討すること、真摯に過去と向き合える歴史教科書を採択することをもとめていく。

2009年8月5日