定時制殺到問題 県教委が初調査 | |
神奈川新聞2007年08月03日 | |
全日から転向 狭き門 定時制・志願者殺到問題 |
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○今春の公立高校定時制入試に志願者が殺到した問題で、その原因は学力不振や経済苦から希望の全日制の受験を断念して定時制に押し出された影響が大きいことが、県教育委員会の初の実態調査で浮き彫りとなった。定時制が第一希望の生徒にとっては狭き門になり、全日制希望者の方が合格率が高いというねじれ現象を生んでおり、現場からは教育環境の悪化を懸念する声が上がっている。(成田洋樹) 学力不振や経済苦で 県教委は、今春入試で定時制を受験した生徒の出身中学に調査を実施。それによると、今春入試の定時制受験者二千二百八十三人のうち、定時制希望者は46.8%の千六十八人にとどまる一方、全日制希望者は53.2%の千二百十五人に上った。 合格者数は、定時制希望者では86.2%の九百二十一人だったが、全日制希望者は95.6%の千百六十二人だった。 定時制が全日制から押し出された受験生の受け皿となり、その影響で定時制を第一希望にした生徒が押し出されてしまった格好だ。出身中調査に併せて実施した定時制の一年生対象の志願動向調査も、これを裏付けている。 現場は、定員を増やしたことで教育内容に支障が出てきた。「生徒に目をかけてくれる先生が減った」。横浜市内の県立高校定時制の男性教諭(44)は、生徒から投げ掛けられた言葉が忘れられない。その生徒は五年前にいったん退学したが、二年前に再入学。この間、生徒数は七十人ほど増え、きめ細かい教育が難しくなっていた。 定時制には中学時代に不登校だった生徒や外国籍の生徒、学力不足の生徒らが集うだけに、この教諭は「定時制でやり直そうと心に秘めた生徒一人一人をフォローしたいが…」と悩んでいる。 一方、全日制希望者が定時制になだれ込むことで、新たな問題が起きている。定時制に不本意入学した生徒が授業内容などに幻滅して退学、全日制を受け直したり、高卒認定試験を受けたりするケースもある。現場関係者は「定時制希望者と不本意入学者双方にとって不幸な教育環境」と指摘、全日制希望がかなうよう全日制公立枠のさらなる拡大を求めている。 また、現場からは「やんちゃな生徒が増え、定時制が全日制でいう『課題集中校』化している」との声も上がる。定時制の教員OB(62)は「今の先生は生徒指導に追われている。昔だったら、喫煙する生徒がいれば腹を割って話す余裕もあったけど、生徒急増で対応しきれない」と不安を募らせている。
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