公立全日制定員枠 不拡大を正式決定 |
神奈川新聞2007年09月12日 |
”ミスマッチ”継続懸念も 県教育委員会と県私立中学高等単校協会は11日の県公私立高校設置者会議で、2008年度の県内公立高校全日制の定量枠について、07年度と同様に県内の公立中学校卒業予定者の約60.6%とすることを正式に決めた。(成田 洋樹、解説も)全日制公立枠を拡大しないことに対し、教育関係者の間では、今春入試のように全日制希望者が家庭の経済的事情や学力不振などから定時制に進学せざるを得ない”ミスマッチ現象”が来春入試でも続く、と懸念する声が上がっている。 県内の公立中学校を来年三月に卒業する予定の生徒は前年度より541人減の64392人で、うち60.56%の39000人を全日制公立枠とした。これを受け、県教委は10月、来春入試の定員計画を定める。 県内の公立中学校を今年三月に卒業した生徒が、県内外の国公私立高校全日制に進学した割合は2年続いて全国最低水準の89.3%に低迷。今春入試では県教委の見込みを大幅に超えて定時制に志願者が殺到し、合格者数を急きょ430人増やすなど混乱が続いた。 混迷深まる可能性 解説2008年度の全日制公立枠が、07年度並みにとどまることが決まった。家庭の経済事情で私学全日制に進学できない生徒が増える中、全日制公立枠を拡大しないままでは混迷に拍車が掛かる恐れがある。 県教委には全日制公立枠を拡大する選択肢はなかった。私学側と06年度に合意した「60%ルール」に拘束されたためだ。全日制公立枠を09年度から県内の公立中学卒業予定者の60%に固定するもので、全日制公立枠は07年度から09年度にかけて徐々に減らしていくはずだった。 県教委は入学者を増やしたい私学側の理解を得て、この既定路線を修正。「公私協調路線の中で最大限努力した結果」と強調するが、来春入試での事態好転に向けた説得力のある政策を打ち出すことはできなかった。 中学時代に不登校だった生徒や、高校から心機一転やり直しを目指す生徒らが多く集う定時制が全日制からはじき出された生徒の受け皿のように位置づけられることに、定時制教員の反発は強い。「定時制で緊急の合格者増はこの6年間で5年も起きている。何度繰り返されるのか」 県教委と私学側の「公私協調」の名の下で、しわ寄せを受けるのは生徒だ。松沢成文知事主宰の県立私立高校設置者会議は、「機能不全」の様相をさらに深めるか否かの瀬戸際に立っている。 |