格差の中の生徒たち
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神奈川新聞2007年11月18日 |
進学や修学旅行 経済事情で断念
横浜で討論会 深刻な報告続々
県立高校の教員らが格差社会の影響で揺れる教育現場について報告する討論会が17日、横浜市中区内で開かれた。家庭の経済事情で生徒が将来の夢を断念せざるを得ないケースなど厳しい現状と、教育の機会均等が損なわれている実態が浮き彫りとなった(成田洋樹)
県立高校で生活保護世帯などを対象とした授業料免除を受ける生徒の割合が学力不振の課題集中校ほど高く、家庭の経済格差が学力格差につながることを裏付ける県教育委員会の調査結果が判明したのを受け、県高等学校教育会館教育研究所が企画した。
討論会には高校教員やOBら約60人が参加し、生徒の実情を訴える声が相次いだ。
「9万円の修学旅行費を工面できず、参加しない生徒が15%に上った」、「部活動の大会で勝ち上がっても、次の会場が遠いと分かると『交通費がかかるのでもう勝たなくていい』と漏らした生徒がいる」
家庭の経済事情で卒業後の進路を変更せざるを得ない生徒もおり、課題集中校の教員は「将来の夢に向かって努力してきた生徒が、内定した専門学校への進学を学費が用意できないために断念せざるを得なかった」とじくじたる思いを語った。
同研究所研究員の高校教員らは調査結果について「現場の実感を裏付けるものだが、県教委の高校改革の議論では取り上げられていない問題だ。予備校化する進学校にだけ目が向いていないか。公教育の在り方が問われている」と指摘した。
生徒を取り巻く環境は教育現場だけで解決できない重い課題のため、研究員でもある佐藤香・東大社会科学研究所准教授(教育社会学)は「政府の教育投資は明らかに低い」として拡充の必要性を強調。「授業料免除を受けていなくても厳しい家庭は多い。免除対象を広げるべきだ」との意見も上がった。
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