本文へジャンプ

ホーム > 神奈川の教育情報 > ニュース > 「高卒テスト」導入提唱 教育再生会議

「高卒テスト」導入提唱 教育再生会議

神奈川新聞2007年11月19日

入試改革素案
大学生の学力担保へ

大学の入学定員と志願者が同数になる「大学全入時代」の到来をにらみ、大学進学者の学力を担保するため「高卒学力テスト(仮称)」導入を提唱した政府の教育再生会議(座長・野依良治理化学研究所理事長)の大学入試制度に関する改革素案が18日、明らかになった。テストに合格しないと大学を受験できなくなる仕組みで、高校未卒業者を対象にした現行の高等学校卒業程度認定試験(旧大検)の衣替え選択肢に挙げた。
 再生会議は来月取りまとめる第三次報告への盛り込みを検討、20日の再生会議合同分科会で本格討議に入る。
 背景には、昨年に高校の未履修問題が発覚したことも踏まえ、大学進学者の「質」を担保しないと、日本の大学制度が信頼を失うとの危機感がある。ただ受験生の「負担増」に直結するうえ、少子化の中で定員を確保したい大学側の反発も予想され、導入の是非をめぐり大きな議論を呼びそうだ。
 素案は大学全入時代の到来や、書類・面接などで選考するアドミッション・オフィス(AO)入試、推薦入試の拡大に伴い「大学入学時に必要な学力が備わっていない学生が増加している」と指摘し、学力担保策の必要性を強調した。
 高卒学カテストの対象については国公私立を問わず「大学進学志願者全員が必ず受験」すると明記。試験科目には、学習指導要領上の必修教科・科目(保健体育、芸術、家庭、情報を除く)を挙げ「全科目合格者に大学進学資格を付与」するとした。
 ただ、この場合は「特定分野が不得意だが、得意分野に秀でた生徒が大学に進学できなくなる」との問題点も併記した。
 受験生の負担軽減措置として、大学入試センター試験で一定の点数を取れば当該科目を免除することも検討課題とした。合絡者を一般入試に先立ち決めるAO・推薦入試との兼ね合いなど、制度の具体的な運用方法は今後の議論に委ねられる。

◆大学全入時代
大学・短大の志願者数と入学定員がほぼ一致する状況。18歳人口の減少や大学・短大進学率の向上、定員増などが要因になっている。2007年度にも全入時代に入ると予想されたが、今年8月に発表された文部科学省の学校基本調査速報によると、07年度の入学数は約69万8千人で、志願者数約77万2千人に対する割合は約90%だった。

大学淘汰の狙いも

 政府の教育再生会議が大学入試改革の目玉として、進学志願者への「高卒学カテスト」導入の検討に入る。背景には、大学全入時代の到来をにらみ、入学者の学力低下傾向に歯止めをかけなければ、最高学府にふさわしい教育を行えなくなる大学が拡大するとの危機感がある。
 改革素案が「大学入学時に必要な学力が備わっていない学生が増加」していると指摘するように、大学教員の間から「九九さえできない学生もいる。そんな学生に何を教えればいいのか」(国立大准教授)との声が聞かれる。
 再生会議関係者は「誰でも入れる大学にも助成金という名の税金が投入されている。大学淘汰(とうた)を促して『質』を担保し、国際競争力の基盤となる人材を育成することが必要だ」と指摘する。
 ただ受験生の負担が増すことへの批判が広がる可能性もあり、第三次報告に盛り込まれても、直ちに実現に向かうかは見通せない。
 文部科学省の調査によると、高校で学ぶ内容を大学で教える「補修」は2005年度で210校と全体の約3割にも及ぶ。一方、定員割れしている年制私立大は全体の約4割に上っているとされる。大学経営者から反対論が噴き出すことも想定される。