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崩れゆく機会均等 「格差」の中の県立高校 4
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神奈川新聞2007年12月09日 |
しわ寄せ解消策なく
神奈川のある県立高校定時制では今年四月、授業を始められない事態に陥った。入学者増に伴う補充の非常勤教員の配置が遅れたためだ。今春入試で定時制に志願者が殺到し、県教育委員会が合格者を急きょ大幅に増やした影響が、新年度に入ってからも続いた。
同校は四月半ぱに入り、.非常勤教員不在のまま正規一教員だけで一日三コマ(通常四コマ)の暫定時間割を組み、授業を始めた。通常授業は五月の連休明けまで待たなけれはならなかった。
向学心を燃やして入学した一年生は後に教員に不満をぶつけた。「授業が始まらなかったことにはがっかりした」と。
近年、県内の公立高校定時制に進学する生徒が右肩上がりで増え、定時制が大規模化している。県教委と私学側の協議で決める公立高校全日制の総定員が希望者数に比べて圧倒的に少なく、夜間に学ぶ積極的ほ理由がない生徒が定時制に追いやられているからだ」
同じ高校の定時制教員は、ある生徒の中学時代の成績を見て驚いた。公立全日制の学力中堅校の合格ラインに届くほどの好成績だったためだ。同校では英語と数学で習熟度別授業を展開しているが、「学力差がさらに広がり、学力の高い生徒向けの授業をしなくては」との話題が、教員間でしきりに持ち上がった。
部活動への参加を希望する生徒が増えているのも近年の特徴の一つ。教員は生徒の全日制志向の表れとみている。「かつては授業が終わったらすぐに帰る生徒が大半だったのだが…。全日制と同じような学校生活を送りたい意思表示だ」
同校では今春入学した一年生が中途退学するケースが例年よりも少ない。教員は「授業は出ないけど留年したいと申し出る生徒が多い。居場所がなく、学校にしがみついていたい気持ちが透けて見える」と、生徒の複雑な気持ちを察した。
定時制の生徒急増に伴い、これを支える教員たちは火の車だ。教員一人当たりの生徒数が本年度、普通科で定時制14.9人。全日制の14.7人を上回る異例の事態となった。定時制を希望する教員は少ない。心身ともに疲れ切っているベテラン教員が多い。
不登校などさまざまな課題を抱える生徒にきめ細かな対応をしてきた定時制が、大きく変質している。県教委は来春入試について、希望者が多い公立高の定員枠拡大について私学側に、はなから要求しなかった。生徒確保が経営の死活問題となった私学側との「公私協調」路線を優先することで定員は現状維持にとどまり、定員拡大以外の有効策も打ち出せずにいる。
学力的にも経済的にも厳しい生徒が集中する定時制へのしわ寄せを減らすための抜本的な対策が講じられないまま、来春の入試を迎える。
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