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崩れゆく機会均等 「格差」の中の県立高校 5
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神奈川新聞2007年12月11日 |
公教育の役割放棄に
進学校で有名な県立高校の今春の終業式でのことだ。淡々と終わるはずだった式が、生徒たちの校長への異例の直談判で一変した。「土曜日の時間の使い方を勝手に決めないでほしい」。
2007年度から全生徒参加の補習を行う土曜日を"部活禁止"とする計画が生徒たちの耳にも伝わり、抗議をしたのだった。同校は有名大学への進学実績を挙げる進学重点校の指定を五月に控え、布石を打つ構えだった。部活動が盛んな同校の1,2年生が相次いで校長の考えをただした。「受験勉強のためだけではなく、部活や行事などさまざまな経験を積みたくて高校に入った」。その場にいた教員は生徒の思いをそう受け止めた。
校長は回答を留保したが、4月の始業式で「補習への参加は生徒の自主的な判断に任せる」と譲歩し、全員参加計画を引っ込めた。
同校教員は疑問を投げかける。「補習を望む生徒は確かにいて、希望に応える必要はある。だが、学校を挙げて取り組むことで犠牲にされるものは多くないか」
県教育委員会は進学重点校十校の指定で、進学実績重視を鮮明にした。加えて、2009年度には全県学区の公立中高一貫校が2校開校する。県教委は一貫校について「新たな進学校をつくるわけではねい」とのスタンスだが、塾関係者は「受験するのは私立中学を志望する層と重なり、有名大学への進学実績を問われる学校になるのは間違いない。早晩、進学校化する」と指摘する。
一方で、県教委は本年度から、申請者が急増している県高等学校奨学金(07年度予算額約14億円、国公私立高校の約4200人に支給)について、応募資格で生活保護世帯を除き成績要件を新設して貸与のハードルを上げた。返還免除の条件も同様に成績要件のレベルを上げた。
県教委は応勢資格の厳格化について「制度を安定的に運営していくため、成績優秀、原則返還という方針に立ち返った」と説明する。だが、約270人が選から漏れ、前年度まで支給されていた生徒に行き渡らないケースが出ている。
学区撤廃、進学重点校指定、中高一貫校…。県教委が次々と打ち出す「改革」で選択肢が広がり、恩恵を享受しているのは誰なのか。経済的に恵まれ、教育投資が十分にできる層が結果として、有利になる制度になってはいないか。授業料免除率の格差は、その一端を物語っている。
神奈川の教育事情に詳しい東京大学社会科学研究所の佐藤香准教授(教育社会学)は警鐘を鳴らす。「一連の動きは格差助長に結びつく可能性が高く、このままでは公教育の役割放棄と見なされても仕方ない。教育と福祉の連携を深めるなどして、格差を再生産しない取り組みを進めるべきだ」
(この連載は成田洋樹が担当しました)
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