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教科書検定 密室性迫る

神奈川新聞2008年03月12日

問題点など寸劇で
横浜 15日に県教員、市民ら

 教科書検定制度の問題点を分かりやすく伝えようと、県内の高校教員や市民らが15日、密室で行われている検定の舞台裏を再現する寸劇を横浜市中区内で披露する。沖縄戦の「集団自決」での「旧日本軍の強制」の記述が、文部科学省の解釈で削除された実態が浮かび上がる内容となっている。(成田洋樹)

 企画したのは、かつて検定に異議を申し立て教科書裁判を起こした故・家永三郎氏や高嶋伸欣琉球大学教授の支援者らを含む市民団体「教科書・市民フォーラム」。幅広い人たちに関心を高めてもらおうと初めて寸劇に取り組むことになった。教科書執筆者の証言を基に再現されるのは、文科省の教科書調査官が2006年12月、高校日本史の教科書執筆者らに対し、集団自決の記述に検定意見を付けた場面。調査官は歴史研究書を引用し「最近の研究では軍の正式な命令はなかったという説が固まりつつある」として修正を要求した。
 過去三回の検定で問題とされなかった記述に待ったがかかり、不審に思う執筆者。調査官が引用した同じ研究書には、軍の強制が大きな役割を果たしたことに変わりはないとする趣旨の記述もあった。だが、時間をかけて作り上げた教科書が不合格になるのを避けるために修正に応じた。
 同フォーラムメンバーは「検定制度は今回のように何か問題が発覚しないと注目を集めにくい。教科書裁判の結審後も依然として制度には矛盾点があるので、改善を訴えていきたい」と話している。寸劇には十数人が出演する予定。高嶋教科書裁判の内容について取り上げる場面では、高嶋教授自身も出演する。
 会場は中区本町の横浜市開港記念会館で、午後4時から。入場無料。劇終了後に、高嶋教授の講演会もある。

◆集団自決検定問題
 教科書検定審議会が旧日本軍の強制があったとする記述について「誤解を与える恐れがある」として検定意見を付けたことに対し、沖縄で抗議運動が広がった。文科省が各教科書会社に記述の訂正申請を促し、軍の関与を示す記述は復活した。