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未返還増で訴訟38件

神奈川新聞2008年05月04日

07年度県内の奨学金

 卒業後に奨学金が返還されず、訴訟となるケースが増えている。二〇〇七年度は県内だけで三十八件の訴訟が起こされた。不況の影響からか、経済的事情で返済が滞る場合が多く、給料差し押さえに踏み切ったケースも。一方で奨学金を希望する学生は増加傾向で、独立行政法人「日本学生支援機構」では「活用してほしいが、卒業後の返還が大前提。返還金が後輩の奨学金になることを強く認識してほしい」と呼び掛けている。

(石尾正大)

 同機構は、〇六年度は全国で約百万八千六百人に計七千八百九億七千八百万円を、〇七年度は約百一万八千九百人に計八千二百十五億三千五百万円を貸与した。〇六年度では大学生の三・六人に一人が同機構の奨学金を受けた計算になり、毎年増加しているという。
 奨学金の未返還額も、連動するように増加中だ。通常、返還は卒業後に十〜二十年かけて行われる。〇五年度は予定額二千五百七十五億円に対して五百六十二億円が、〇六年度は二千八百五十五億円に対し六百十四億円が未返還だった。
 延滞の理由はさまざまで、〇六年度の同機構の調査によると、「低所得」(25.2%)、「借入金の返済」(14・2%)、「無職・失業」(13・2%)などが挙げられている。
 同機構では〇五年度から法的措置を積極的に実施。〇七年度には延滞者四万五千人に予告文書を送付し、そのうち連絡がない千百八十八人に、全国の簡易裁判所を通して支払い督促を申し立てた。大部分は和解したが、判決までもつれ込み、給与差し押さえに至ったケースも一件あった。
 東京地区私立大学教職員組合連合が首都圏に通う私大・短大生の家庭に行った〇七年度アンケートによると、自宅外から通う学生の仕送り額(六月平均)は九万五千九百円(前年比三千三百円減)で、一九八六年の調査開始以来、最低。奨学金希望者は全体の63・2%を占め、九二年の調査開始以来、最高だった。
 同機構は「総予算額の三割弱を返還金で賄っており、未返還金の増加は奨学金の門戸の狭まりに直結する。訴訟にならなけれ還してもらえない人がいるのは非常に残念」と話いる。