不登校一万人越に |
神奈川新聞2008年08月08日 |
2年連続全国最多−県内の公立小中 県内の公立小中学校の児童・生徒数は約六十七万人。調査は県内の小学校八百六十八校、中学校四百十六校の全校で実施し、病気以外の理由などで〇七年度中に三十日以上欠席した児童・生徒について調べた。 中学校の不登校生徒は、前年度から百四十三人増え七千九百四十九人。全生徒に対する割合は4・02%だった。小学校も百二人増の二千百五十三人(割合は0・46%)。このうち、横浜市では不登校の中学生は百七十八人増の二千八百四十一人、小学生が四十一人増の千三十一一人。県内の全中学校の99%、全小学校の約78%に不登校児童・生徒が在籍していた。 不登校になったきっかけ(複数回答)は「極度の不安や緊張、無気力などで、特に直接のきっかけとなる事柄が見当たらない」が小中学生とも四割近くを占め、中学生では友人関係(20%)、学業不振(11%)が続き、小学生は親子関係(22%)、友人関係(13%)の順。 いじめが原因となったケースは中学生が6・2%、小学生が4・7%だった。また、不登校が継続している理由は小中学生とも「不安など情緒的混乱」が最も多かった。 県教育委員会は、神奈川よりも児童・生徒数が多い東京都や大阪府を上回る県内の不登校者数を深刻に受け止めており、対策委員会やフリースクールとの協議会を発足させるなど抜本対策に着手している。〇七年度に教諭らの指導の結果、登校できるようになった中学生は二千六百十七人、小学生は七百七十人だった。 不登校県内1万人超 初期対応徹底へ −県教委フリースクールと連携 県内の不登校児童・生徒数が初めて一万人を超えた。県教育委員会によると、幼少期からゲームや携帯電話などでバーチャル(仮想的)世界に夢中になって昼夜逆転など生活リズムが乱れ、通学に「興味がない」「面倒くさい」と感じる無気力な子供が増加傾向にあるという。関係者は一様に、教諭が子供と直接触れ合う機会を増やすことや「初期対応」の徹底が対策の鍵を握るとみている。 (真野太樹) 県不登校対策検討委員会の小林正幸委員長(東京学芸大教授、教育臨床心理学)は「全国にはいまだに不登校を病欠扱いにしている地域もある。神奈川で多いのは正確にとらえた結果」と説明する。しかし、それを踏まえても「1万人」という現実は重い。 小田原で三十五年、不登校問題やフリースクール活動に取り組む特定非営利活動法人(NPO法人)「子どもと生活文化協会」の和田重宏会長は「時代の特徴が色濃く出ている」と分析。生活が便利になり、子供でさえ人の助けやつながりを必要としない社会になりつつあることや、バーチャル体験が増え、子供たちの解決する力が失われたと感じるという。 同NPO法人の活動では自然の中で遊んだり、米作りなどで創意工夫を体験し、多くの子供が元気になって学校に戻っている。県教委は、そうした県内のフリースクール+団体と連携し、教諭がフリースクールの現場で長期研修する試みも全国に先駆けて始めている。 県内には〇七年度だけで不登校を十人以上減らした中学が二十校あり、三〜四割の小中学校で不登校者を減らしている。「教諭が電話したり迎えに行った」「教諭が家庭訪問で相談」など直接の触れ合いの効果が出ているという。 「初期のころは、先生からの『どうしたの?』という一言で救われる子供は多い」と小林委員長。県教委は今後、子供が欠席したら「一日目に電話」「二日目に手紙」「三日目に家庭訪問」という初期対応を全教諭に徹底させる方針。各地域の実情に合った個別対策も検討する。 一方で、不登校問題に詳しい県立保健福祉大の小林正稔准教授(臨床心理学)は「中学生の不登校が増えたから中学で対策を始める、ということでは遅い」 と強調。「小学校低学年のうちに、二十五人学級を二人の教諭で指導するなどして子供が生きる力を育てないと、不登校は減らせない」と教育制度を大胆に変える必要性を説いている。 全国は1.9%増12万9千人に 全国の「不登校」の小中学生は、前年度より1・9%増の十二万九千二百五十四人だったことが七日、文部科学省の学校基本調査速報で分かった。二年連続で増加傾向を示した。 中学生は前年度より約二千二百人多い十万五千百九十七人で全体の約八割を占めた。生徒全体に対する割合は2.9%で中学生の三十四人に一人が不登校の状況にある。中高一貫の中等教育学校前期課程(中学に相当)に在籍する生徒は百三十一人だった。 小学生は約百人増の二万三千九百二十六人で、全児童に対する割合は0・3%だった。調査は国公私立校が対象。千人あたりの不登校の割合は山梨県が一五・一人と最多。最も少なかったのは秋田県と愛媛県の八・九人だった。 高校生も支援 文科省 不登校となっている高校生を支援するため、文部科学省は七日までに、フリースクールを中心とした学校外施設などに通っている生徒を、校長や教育委員会の判断で「出席扱い」とすることを認める方針を固めた。今後、適用条件を検討し実施時期を決める。 出席扱いの適用はこれまで小中学生だけだったが、文科省は高校進学率がほぼ100%となり、“事実上の義務教育化”している実態を考慮した。 文科省は、不登校の小中学生が七万人を超えた一九九二年から出席扱いの措置を導入。一方で不登校の高校生は〇六年度で五万人を超えており、同様に支援する必要があると判断。高校は教科の履修や単位の取得など学習状況が異なるため、学外施設が教育的な活動をしているかどうかという点を含め、新たな条件や判断基準を検討する。 |