中山国交相が引責辞任 |
神奈川新聞2008年09月29日 |
首相 責任認め陳謝 中山成彬国土交通相(65)は二十八日、日教組への批判など一連の問題発言について責任を取って麻生太郎首相に辞表を提出し、受理された。首相は同日、記者団に対し、自身に任命責任があることを認めるとともに「発言は、甚だ不適切で大変残念だ。国民、関係者に心からおわびする」と陳謝した。首相は二十八日夜、官邸に金子一義元行政改革担当相(65)を呼び、中山氏の後任に起用することを伝達。金子氏は二十九日に皇居での認証式を経て正式就任する。後任に金子氏 閣僚が在任わずか五日で辞任に追い込まれるのは異例で、麻生政権にとって大きな痛手となった。十一月に想定する次期衆院選に影響を与えるのも必至。与党内では予算委員会での野党側の厳しい追及を避けるため、各党の代表質問が終了する十月三日の衆院解散を求める声が強まりそうだ。 中山氏は辞任後、国交省で記者会見し「臨時国会の審議に支障があるとすれば私の本意でない。スムーズな審議のため身を引くことを決意した」と辞任理由を説明した。 首相は今後の信頼回復について「後任を選任し、その人がきちんと対応していく。地道な努力が必要だ」と述べた。また、河村建夫官房長官は記者会見で政権への影響に関し「ダメージがないと言えばうそになるか、政治の遅滞は許されない。信頼回復に全力を尽くす」と強調した。 中山氏は二十五日、報道各社とのインタビューで大分県の教員汚職事件に関し「体たらくは日教組(が原因)。日教組の子どもなんて成績が悪くても先生になる」と述べたほか、「日本は随分内向きな単一民族」「(成田空港反対闘争は)ごね得というか、戦後教育が悪かった」と発言した。 その後発言を撤回したが、二十七日には地元宮崎市での会合で「何とか日教組は解体しなきゃいかんと思っている」「日本の教育の『がん』である日教組をぶつ壊すために私が頭になる決意を示した」などと日教組批判を繰り返した。 「確信発言」笑みも 冷たい視線よそに持論 二十八日午前、国土交通相の辞表を首相官邸で提出後、中山氏は東京・霞が関の国交省で開かれた会見で、日教組批判を連発した。 発言への反省の弁はほとんどなく、教育論をぶつ際には笑みも。 約一時間の会見の終わりに「予算審議の障害になるなら退く」と辞任理由を繰り返し、記者から「もう障害になっている」と指摘され、一言だけ「すいません」と述べた。 国交省の会見場にグレーのスーツ、黄色いネクタイ姿で姿を見世た中山国交相は視線が定まらず、落ち着かない様子。百人を超える報道陣を前に「臨時国会での緊急経済対策の審議にいささかの支障があれば本意とするところではない」と切り出した。辞任の心境を問われ、声の震えを隠すように「本当に悩んだ。胸の張り裂ける思いだった」と語った。 しかし日教組発言について問われると一転、滑らかな口調で「ごく一部の過激な分子が日本を駄目にしている」と持論を展開。「なぜポストを投げ出してまで発言したのか」と問われ「子供たちのことを考えた」と強調した。 「大臣を受けるべきではなかったのでは」という質問には、十五秒ほど考え込んだ上で「やっぱり受けるべきだった。こうなったのは残念だが」と答えた。 その後、地元の宮崎市に戻った中山氏は、地元の団体にあいさつ回りをした上で再び記者会見。 「政治家は職を賭してでも主張する時がある」とたんかを切り、日教組批判の発言を「どうしても撤回するわけにはいかない」と強調した。 また、次期衆院選への出馬に意欲を示し「ピンチをチャンスに変える」。記者団から「議員として資質が問われている」との厳しい質問が飛ぶと「これからの私の生きざまを見ていただきたい」とはね返した。 「首相に任命責任」アイヌ民族 中山氏の国交相辞任について北海道のアイヌ民族からは二十八日、麻生太郎首相の任命責任を問う発言などが相次いだ。 札幌市南区の木版画家結城幸司さん(44)は「閣僚に就任直後の問題発言であり、首相に任命責任がある」と指摘。麻生首相も総務相時代の二〇〇五年十月、「(日本は)一国家、一文明、一言語、一文化、一民族」などと発言しており、「首相も同じ考えなのではと疑ってしまう。この政権が続けば今後アイヌにとっては良い方向に向かないのでは」と心配する。 旭川市の川村アイヌ記念館館長の川村兼一さん(57)は「今年は政府の有識者懇談会で(アイヌ民族の)先住権について議論されているのに、あまりに失礼だ。任命した首相も悪い」と憤る。「アイヌについてしっかりとした認識を持った人を後任に選んでほしい」と注文も付けた。 |