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二審も「軍が深く関与」

神奈川新聞2008年11月01日

大江健三郎さん沖縄ノート訴訟
元隊長らの訴え棄却

 太平洋戦争末期の沖縄戦で旧日本軍が「集団自決」を命じたとする作家大江健三郎さん(73)の「沖縄ノート」などの記述をめぐり、沖縄・慶良間諸島の当時の守備隊長らが名誉を傷つけられたとして、岩波書店と大江さんに出版差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は三十一日、一審に続き、元隊長ら側の訴えを退けた。

 元隊長らは上告の方針。判決理由で小田耕治裁判長は「集団自決に日本軍が深くかかわっていることは否定できず、総体としての軍の強制ないし命令と評価する見解もあり得る」と指摘。
 元隊長が直接住民に命令したかどうかは「証拠上断定できない」としたが、@発刊時は隊長命令説が学会の通説といえる状況で、真実と信じるに相当な理由があったA出版が継続される中、その後の資料で真実性が揺らいだが、記述が真実でないことが明白になったとまではいえない−として、名誉棄損の成立を認めなかった。
 また、小田裁判長は判断の前提として、今回のように、高度の公共性と公益性が認められ、長年にわたり出版が続けられている書籍に関しては「新資料で記述の真実性が揺らいだからといって、直ちに出版の継続が違法になるとするのは相当でない」と指摘。 「著者に過去の著作についても、新資料の出現に常に意を払わせ、真実性を再考させ続けるような負担は、結局は言論を萎縮さ迂ることにつはがる恐れがある」とした。
 座間味島の元守備隊長梅沢裕さん(91)と、渡嘉敷島の元守備隊長の弟赤松秀一さん(75)が、「沖縄ノート」と故家永三郎さんの「太平洋戦争」の記述をめぐり提訴。
 一審大阪地裁はことし三月、「集団自決に軍が深く関与したのは認められる」と指摘し、請求を棄却。元隊長ら側が控訴していた。

主張認められ喜び−大江健三郎さんの話
 私たちの主張が認められたことを喜びます。沖縄戦叩で七百人の島民が軍の関与で集団死をとげたことは、沖縄の人々の犠牲の典型。生存者たちによる新しい証言が次々になされたので、沖縄戦について教育する、教育される人たちが注意深く学ばれることを希望します。

沖縄戦の「集団自決」
 太平洋戦争末期の1945年3月下旬、米軍は沖縄・慶良間諸島に上陸。座間味、渡嘉敷両島の住民は3月25−28日ごろ、日本軍から配られた手りゅう弾などを使って自ら命を絶った。人数は定かではないが、同諸島の慶留間島も含め約600人ともいわれる。沖縄戦ではほかに読谷村や伊江島などでもあった。軍に強制された死と強調する立場からは「強制集団死」との表現も使われる。