神田高・不適正選考 保護者、心情を吐露 |
神奈川新聞2008年11月26日 |
「偏見で人生が…」 神田高で基準点を超えながら不合格になったのは二〇〇四年度、〇五年度実施の入試でいずれも六人、〇七年度は十人。 現在十八歳になる長男が〇五年度の後期選抜を受けた小田原市内の母親(53)は今月半ば、県教委から「お話ししたい」と手紙が届いた。その数日後の二度目の手紙に「合格圏内に入っていたにもかかわらず不合格にされていた」と理由が示されていた。 母親は事態をのみ込んだ。「息子もあの時入学していれは違った人生を歩んでいたはずなのに」と悔しさを隠さない。 長男は「おれだって高校生を見るとうらやましいし、高校に行きたかったよ」と話すが、進学した同級生は高三。「ようやく仕事を見つけ車の免許も取った。今さら三年間通う気にはなれない」 中学生時代、茶髪にしたことが原因で教室に入れてもらえず、中二半ばから不登校になった。再起をかけ中三から横浜市内の公立中に転校。親類の家に下宿し、塾に通って個別指導を受け高校受験に備えてきた。 塾の先生とも相談し、小田原市内の実家から通える距離も考慮して神田高を選んだ。母親は当時、「お母さん、受かったと思うよ」と長男が明るく話していたことを覚えている。ピアスのあともあったが、髪を黒染めして受験に挑んだ。「息子は外見とは違い思いやりのある子。周りに迷惑をかけるようなことをする子ではない」(母親) 入学した通信制高は続かず、交通事故でけがしたことをきっかけにふさぎ込み、うつ状態になったこともある。ことし夏前からハローワークに通い、とび職の仕事を見つけて働き始めたところに、手紙が届いた。 神田高の前校長の復帰を求める嘆願書が提出されたことを、母親は報道で知った。複雑な思いをにじま甘た。「不合格にされた息子のことも理解してほしい。(外見という)偏見で二十二人の人生を変えたのだから」 県教委は不合格にされた受験生とその保護者に手紙を出して当該者と伝えている途中。「生徒や保護者と直接会って謝罪し、今後の対応を相談したい」(高校教育企画室)としている。 |