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日教組拒否で賠償

神奈川新聞2009年07月29日

プリンスホテルに東京地裁命令
「司法制度を無視」

 日教組と傘下77単組、組合員1889人が、教研集会の会場使用や参加者の宿泊を契約後に拒まれ、集会や言論の自由を侵害されたとして、プリンスホテル(東京)や渡辺幸弘社長ら役員12人に計約2億9千万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は28日、請求全額の支払いと全国紙への謝罪広告掲載を命じた。
 日教組側の全面勝訴で、同社は判決を不服として控訴する方針。
 河野清孝裁判長は「ホテル側の一方的解約には法的根拠が溶く、債務不履行は明らか。仮に右翼団体の街宣活動があっても、契約は履行できる」と指摘。日教組側の仮処分申し立てを認めた裁判所の決定にも従わなかった同社の姿勢を「司法制度無視で違法性が著しい」と批判した。
 教研集会への参加については「相互の意見を交流させ、思想や人格を形成、発展させる」と言及。法律上保護される利益と判断し、ホテルや渡辺社長らは不法行為に基づく賠償責任を負うとした。
 教研集会の警備状況をめぐる日教組の説明が不正確だったという文書をホテル側がホームページに掲載した点も「仮処分決定に従わない自らの違法行為を正当化するだけでなく、右翼団体の違法な妨害行為を助長する内容で許されない」として、日教組への名誉棄損に当たるとした。
 判決によると、日教組は2007年3〜10月に、グランドプリンスホテル新高輪(東京都港区)の大宴会場「飛天」を、08年2月2日開催の全体集会会場などとする契約をホテル側と締結。系列の別のホテルと合わせ、参加者宿泊用の190室や前夜祭用の宴会場も確保した。
 ホテル側は07年11月になって「右翼団体の街宣活動などで宿泊客や周辺住民への危険が予想される」などとして、一方的に契約を破棄。日教組による仮処分申し立て通り、使用させるよう命じた東京地裁、東京高裁の決定にも応じなかった。参加者の宿泊拒否をめぐっては、警視庁が今年3月、旅館業法違反容疑で渡辺社長ら4人と法人としてのプリンスホテルを書類送検している。

自浄作用ないホテル−企業統治に詳しい久保利英明・大宮法科大学院大学教授(弁護士)の話◆
 当然の判決で、仮処分命令を無視された裁判所の怒りが表れている。プリンスホテルは命に代えても客を守るべきだったのに、戦う相手を間違えた。時代感覚を欠き、客商売という意識の根幹がねじれている。冷静な判断力や職業への熱い思いがないことを露呈しており、反省して潔く決着させた方がいい。プリンスホテルが所属する西武グループでは、西武鉄道の利益供与事件や名義偽装株事件など不祥事を繰り返してきたのに自浄作用がない。再発防止を考えるなら、厳しい第三者のアドバイスを受け、根っこから変わるべきだろう。

集会の価値を認める−川岸令和・早稲田大教授(憲法学)の話◆
 私人同士の契約なので直接憲法問題とはならないが、自己の思想や人格を形成する場という集会の憲法的価値を認めた判決だ。集会の重要性を高く評価している。プリンスホテルは「宿泊者や周辺地域の安全・安心を守るため」と主張したが、司法制度は自由で民主的な社会を維持するために必須であり、仮処分命令を無視した行為は「安全・安心」を掘り崩しかねず反省すべきだ。ー方の日教組も、実際に集会を開けず参加者が研修できない損害は金銭で解決できないのだから、法律問題とは別に何か代替措置がなかったのだろうか。