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不登校1万人

神奈川新聞2009年08月22日

「初期対応」尽くしたい

 不登校問題は深刻な状況になかなか歯止めがかからない。文部科学省の学校基本調査速報によると、2008年度に県内公立小・中学校で、病気や経済的な理由以外によって学校を年間30日以上欠席した不登校の児童・生徒数は2年連続で1万人を超えた。県教育委員会は重要な課題と受け止めて対策を進めているが、さらに取り組みに力を入れてほしい。
 教育関係の有識者によると、問題の背景にはインターネットや携帯電話、テレビゲームなどが普及し、バーチャル(仮想的)世界に幼少期から夢中になっている子どもが増えていることとも関係がありそうだ。昼夜逆転など日常生活のリズムが乱れ、通学に「興味がない」「面倒くさい」と感じる無気力さが目立っているという。
 また、人間関係がうまく築けず、人の助けやつながりも求めず、引きこもってインターネットなどのバーチャル体験にばかり喜びを感じている事例も少なくないと聞く。そうした傾向に強い危機感を覚える。
 不登校の児童・生徒を増やさない対策の鍵を握るのは「初期対応」の徹底だろう。子どもに不登校の兆しが見えたら、周囲はすぐどんな支援ができるかを考え、救いの手を差し伸べ続けなくてはいけない。
 学校現場では、教師が子どもと直接触れ合う機会を増やすよう努めるべきなのは言うまでもない。初期対応では、教諭からの「どうしたの」という一言だけでも不登校から救われるケースがあるという。児童・生徒に常に関心を払うことが大切で、それを表現するうえでも、親身な声掛けは欠かせない。
 子どもが病気以外で欠席しているとみられるなら、教師は電話をしたり、手紙を出したり、家庭訪問をするなどの対応を惜しまずに行いたい。保護者も子どもたちが不登校に陥らないよう、教師や学校と密接な関係を保つ必要がある。
 県教委が行っているフリースクールとの連携も、さらに推進してほしい。特定非営利活動法人(NPO法人)などによるフリースクールの取り組みでは、子どもたちが自然の中で遊び、さまざまな創意工夫を体験することで元気になって学校へ戻っているという。バーチャルの世界だけでは、子どもたち同士が触れ合い、助け合い、支え合う心は、はぐくまれない。【社説】