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高校の滞納授業料緊急支援

神奈川新聞2010年03月08日

さかのぼり借り入れ可能

 県内をはじめ、全国の公立・私立高校では、今月中に卒業式・終業式が行われます。景気悪化により授業料を滞納し、進級・卒業に不安を抱く生徒に対し、国が対策を取り始めました。先月中旬には、各市町村の社会福祉協議会を通じて貸し付けられる「教育支援資金」を、本年度に限り、緊急に滞納授業料の支払いに活用できる態勢が整いました。社協などでは「卒業・進級が迫っているが、困っている人はまずは一度相談してほしい」と呼びかけています。 (宮島真希子)

5年で約3倍
 県教育委員会教育財務課によると、県立高校の授業料滞納額はこの5年で増え続けています。2005年に2371万9765円でしたが、09年3月末には6990万5559円と、約3倍近くにまで膨らみました。同課は「公立高校には、家庭の事情に配慮した授業料を免除する仕組み(減免措置)などもあり、これまで授業料滞納による卒業延期や卒業式参加見合わせ要請などのケースは出ていません」としています。
 一方、学費が高い私立高校はもっと深刻です。「私学学費ホットライン」を1月24日に実施した神奈川私学教職員組合連合(私教連)の内藤正剛書記長は「親が失業するなど、収入が急になくなってしまい、半年以上授業料を払っていない生徒が急増している」と話します。

緊急支援要請
 1月31日、立教大学(東京都豊島区)で開かれた「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク(仮称)準備会設立シンポジウムでは、呼びかけ人となった県厚木児童相談所児童福祉司の山野良一さんや「子どもの貧困白書」(明石書店)をまとめた立教大学教授の湯澤直美さんらが、この事態を「卒業クライシス」と名づけ、国などに緊急支援を要請。さらに、先月4日に参議院議員会館内で行われた現状報告会で、定時制高校の生徒らが、学費滞納によって卒業できない不安などについて声上げました。
 この院内集会で、駒沢女子大4年生で、あしなが育英会奨学生の森本早紀さん(21)は、奨学金を受けながらも、経済的理由で高校を中退する後輩に触れ「お金がない人間は勉強してはいけないのですか?私たち自身で募金活動もしているが、それでも助けられない子がいる。国を挙げ、精いっぱい取り組んでください」と参加した約20人の国会議員に訴えました。湯澤教授も「滞納が理由で卒業・進級できず、高校を中退する生徒を一人も出さないために何ができるか考え、行動してほしい」と要望しました。

まずは相談を
 こうした草の根の活動を受け、厚生労働省は先月12日付で、各都道府県あてに通知を出し、市町村の社会福祉協議会で手続が可能な「教育支援資金」を、本年度に限り、滞納時にさかのぼって授業料として借り受けられるようにしました。公立・私立高校を問わず利用可能です。
 この資金は、貸付額が月に3万5千円。子ども自身が契約者になり、卒業後、働いて返していく、という仕組みです。県社会福祉協議会は「くわしい仕組みの内容、手続きの方法などについては、県内に58カ所ある社協にまず問い合わせてはしい」と話しています。
 このほか、いくつかの援助の仕組みの問い合わせ先を表にまとめました。友達や先輩・後輩で困っている人がいたら教えてあげてくださいね。