朝鮮学校 無償化除外
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神奈川新聞2010年06月12日 |
政治利用に不信
地域社会の一員・・・新政権を注視
4月から始まった高校の授業料無償化で、対象から外れた朝鮮学校の生徒・保護者が新政権の姿勢を注視している。文部科学省は第三者機関で教育内容を検証し、除外措置を解くか否かを決める方針だが、保護者らは、北朝鮮の拉致問題と関連付けられるなど「政治利用」への不信感をぬぐえない。「教育費だけの問題じゃない」。在日朝鮮人全体に向けられるまなざしをそこに見ている。(石橋学)
5月27、28の両日、スイス・ジュネーブで開かれた国連子どもの権利委員会。傍聴席で李文恵さん(44)は大きくうなずいた。「本当に朝鮮学校だけが除外されているのか」。驚く各国委員。即座に日本政府への是正勧告を示唆した。
2人の子どもが神奈川朝鮮中高級学校(横浜市神奈川区)に通う。「国際的にも恥ずべきこと。日本の方はもっと自分たちの問題として考える必要があるのでは」。地域社会の一員として李さんは訴える。
同校高級部2年の成美有さん(16)はこの春、無償化を求める署名集めのため横浜駅前に立った。「どんな目で見られるのか、ドキドキ。でも、私はこの社会で生きていかなければいけない。分かってもらうためにも、言うべきことは言わなければ、と」
多くが素通りするなか、中年の男性が足を止めた。「使われるのは私たちが払った税金だ」。とっさに「私たちのお父さん、お母さんが払った税金でもあるんです」と言い返した。
同級生の李聖華さん(16)も不満を口にする。「何も知らないのに悪者にされ、のけ者扱いされている」。自分たちがなぜ日本で暮らしているのか。拉致問題とどう関係があるというのか。知ってもらえれば、除外するおかしさにすぐ気付いてもらえると思う。
あるいは、あえて目を背けているのか。
「結局、鳩山前首相も朝鮮学校の見学に来なかった。除外措置は政府が差別を是認するようなものだ」。声を落とすのは孔連順さん(42)、神奈川朝鮮学園オモニ会(母親会)連絡会の代表だ。
米軍普天間飛行場の移設問題に注目していた。沖縄の基地が減れば、それは北東アジア融和への一歩となるに違いない。そうすれば、事あるごとに北朝鮮問題と結び付けられてきた自分たちへのまなざしも変わるかもしれない−。
しかし、基地の県外移設は「抑止力」を理由に断念された。「まるで政治が敵を必要としているかのよう」
1票を持っていないだけにもどかしい。11日、菅首相は所信表明演説で外交方針について「世界平和という理想を求めつつ現実主義を基調とすべき」と語った。
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