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「つくる会」系の育鵬社に
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神奈川新聞2011年07月29日 |
藤沢市教委教科書採択 −市立中学校で歴史と公民−
藤沢市教育委員会は28日の定例会で、来春から市内のすべての市立中学校で4年間使う歴史と公民の教科に「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版を採択した。同社版は県内初。(田崎 基)
採択は合議制で行い、4委員と委員長の計5人で審議。4人のうち佐々木柿己教育長は、歴史・公民の審査で「教育現場の担当者として意見の食い違う教科書が選ばれることは現場に混乱をもたらす。議論を見守りたい」などと事実上棄権し、意見を述べなかった。 歴史・公民の審議は、いずれも七つの出版社の教科書を検討。小澤一成委員長、赤見恵司委員、藤崎育子委員が育鵬社版を推し、渋谷晴子委員は別の歴史・公民教科書を推した。 小澤委員長は育鵬社の歴史教科書について「登場する人物が一番多い」、赤見委員は「読み物風のコラムがあり親しみやすいこと」などを採択理由に挙げた。これに対し、渋谷委員は「過去の戦争に対する反省がおざなりになた内容。藤沢市のこれまでの取り組みとも合致しない」としたが、最終的に「議論の結果に従う」とし育鵬社版で合意した。
判断に波紋広がる 藤沢市立の全中学校で育鵬社の歴史と公民の教科書が使われることが決まった。歴史認識をめぐって論争が起きている教科書採択に踏み切った市教委の判断に波紋が広がっている。 育鵬社の教科書採択に反対してきた琉球大学の高嶋伸欣名誉教授は「多くの市民団体が問題点を指摘している中で(育鵬社教科書を)採択した教育委員の見識に驚いた」と話す。教科書の内容について「自己中心的なナショナリズムに固執したもの」と憤る。 市立中学校の教諭の一人は、第2次世界大戦が「自存自衛のため」と書かれていることを問題視する。「戦争を正当化し、植民地による近代化の功績を強調している。支配下にある人々の苦難に触れていない」と批判する。 一方、育鵬社教科書の執筆者で高崎経済大の八木秀次教授は執筆の目的を「日本文明の独自性を明らかにすること」と説明。「日本の豊かな文化や長い歴史な自信を持つ生徒が増えてほしい」と話している。 教科書採択を異例の継続審議としている県教育委員会は、8月2日の定例会で再審議する見通し。2009年に「新しい歴史教科書をつくる会」が主導する自由社の教科書を採択した横浜市も、8月中に採択を予定している。(佐野克之)
【解説】 藤沢市教育委員会が育鵬社の歴史と公民の教科書を県内で初採択した。2012年度から、市内の中学校19校で同社の「新しい日本の歴史」と「新しいみんなの公民」が使われる。 09年横浜市の8区で採択された自由社版が「応仁の乱」の写真裏焼きなど基本的ミスを多数指摘されたことを踏まえて、育鵬社版は「教科書は学説の主張の場ではない。人物や歴史絵巻などを多くして分かりやすさを心がけた」(八木秀次執筆者)としている。 同日、東京都教委も都立中高一貫校10校で育鵬社版を採択した。県内でも県教委の平塚中等教育学校用、横浜市教委の全区一括の各審議が予定されている。 教育委員会は地域の教育に対して責任を持つ立場にある。審議プロセスや採択理由を分かりやすく説明する義務がある。 また学校現場は、単に「教科書を」教えるのではなく、争点ある事項では「複数の視点」を示し、科学的思考を学ぶ実践を重ねてほしい。教師の力量が問われている。(編集委員・石川美邦)
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