大津の事件受け県教委
大津市で中学男子生徒がいじめを受けて自殺した事件などを受け、県教育委員会はあらためていじめ対策を強化している。いじめをはあくした後の対応に加えて、未然防止の取り組みにも力を入れる。全国平均を下回る「改善率」の向上を目標に揚げるが、数字だけが先走らないか懸念も残る。(遠藤綾乃)
「どの子にも、どの学校にも起こることとして再度、指導態勢を徹底していただきたい」。7月25日、県立学校校長対象の会議冒頭、藤井良一教育長が「異例」の講和をした。前日には「いじめを絶対に許さない」とする緊急アピールを発表。防止に向けた発信に腐心する。
最新の県内公立校のいじめの認知件数(2010年度、ことし2月まとめ)は、4500件(前年度比920件増)。各校での児童生徒向けアンケート実施率が向上したことで、認知件数も大幅に増えた。県教委は「これですべてを把握したとは思わず、まだあるものととらえる必要がある」として、学校の態勢点検やアンケートを重ねることで、早期把握に努めるよう全公立校に呼び掛けた。
いじめを把握した場合には、緊急度に応じて支援チームやスクールカウンセラーを派遣するなどの対応を取る。
加えて県教委は未然防止の重要性を強調する。そのための対策の一つが11年度に設置された「かながわ元気な学校ネットワーク推進会議」(会長・滝坂信一帝京科学大学教授)。学校・教委・PTA・企業・町内会などの関係者で構成される。
いじめや暴力行為、不登校など、これまで問題行動ごとに縦割りだった対応策から横断的に連携した取り組みに転換。元気な学校を実現することで、問題行動を予防する狙い。そのための具体的な取り組みを検討し、できることから実施している。
県教委が目標に掲げるのは、いじめ認知件数のうち年度内に状況が改善した割合を示す「改善率」の向上。91.7%(10年度)という現状を、全国平均値を上回る96.0%に引き上げるという。
ただ、文部科学省はいじめの「解消」「改善」とは何かを定義しておらず、県教委も「各校の判断に任せている」(子ども教育支援課)のが現状だ。
数値目標だけが先走る恐れがあることを県教委も認めた上で、「一度対応したケースでも、いじめが解消したと決めてかからず、継続支援を学校に求めていく」としている。
「いじめを絶対に許さない」緊急アピール
- いじめはどのような理由があろうと、決して許されるものではありません。学校・家庭・地域全体でいじめの未然防止に取り組みます。
- いじめに対しては毅然(きぜん)とした態度で臨みます。学校・教育委員会は決していじめを見逃しません。早期に発見し、迅速かつ適確に、厳しく指導します。
- 児童・生徒のみなさんや保護者のみなさんが相談できる環境を整えます。
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