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日本の教員、世界一多忙

神奈川新聞2014年6月26日

OECD調査 部活、事務 負担に

 経済起用力開発機構(OECD)は25日、中学校を対象に教員の勤務環境や指導状況を調査した国際教員指導環境調査の結果を公表した。1週間の仕事時間は日本が53.9時間で、参加した34カ国・地域で最も長かった。授業時間は参加国平均と同程度だったが、部活の指導や事務作業に費やした時間が大きく上回った。
 「日本の教員は忙しい」と指摘されて久しいが、今回の調査で国際的にも多忙が裏付けられた格好だ。文部科学省は「事務職員を増やすなどして教員の負担を減らし、教育に集中できる環境を整えたい」としている。
 1週間の仕事時間の参加国平均は38.3時間で、日本だけが50時間超。カナダ(アルバータ州のみ参加)48.2時間、シンガポール47.6時間が続き、最も少ないのはチリ29.2時間だった。 
 日本の教員の授業時間は17.7時間で平均の19.3時間を下回ったが、授業の準備は8.7時間(平均7.1時間)。二つを合わせた時間は平均と同じだった。一方で、書類作成などの一般的な事務業務は5.5時間(平均2.9時間)、部活動など課外活動の指導は7.7時間(平均2.1時間)と多かった。
 調査は2012〜13年に各国で実施し、今回が2回目。日本は初参加で、全国の国公私立192校の校長と教員計約3700人が回答した。米国は回答率が基準以下のため平均値に含まれない。
 指導では、生徒が授業や学級活動でパソコンなどの情報通信技術(ICT)を使っているとの回答が9.9%(平均37.5%)で参加国中最も低かった。
 教員の男女比は6対4だったが、女性校長の割合は6.0%(平均49.4%)で最低。一方で、50代の校長の割合は80.4%で平均の47.5%を大きく上回り、参加国中も最高だった。


地域との分担必要
教育評論家で元中学教員の尾木直樹法政大教授(臨床教育学)の話
 以前から指摘されてきた日本の教員の多忙さが証明された。一義的には教員の増員が不可欠で、国として早急に手を打たなければならない。勤務時間を押し上げている部活動も長年の懸案事項だ。過度な競争を学校スポーツに持ち込んでいる例は日本以外にない。文部科学省と教育委員会が学校の管理を強化するために大量の雑務や報告を課していることも含め、教育行政はずっ改善に手をつけてこなかった。現在はこの矛盾が露呈し、体罰の問題も克服できていない状況だ。部活や雑務に追われるのは本来の学校の姿ではなく、地域社会と分担してできるように変えていく必要がある。

 ◆OECDの国際教員指導環境調査
経済協力開発機構(OECD)が中学校を対象に、教員の勤務環境や評価の状況、生徒にどのような指導をしているかなどを国際比較する調査。今回は2回目で、日本は初めて参加した。基本的に各国約200校、1校あたり20人の教員を抽出している。教員には非正規も含む。小学校や高校を対象にした調査もあるが、日本は参加していない


日本の先生 自信は? 自己評価、参加国で最低
 経済協力開発機構(OECD)の国際教員指導環境調査では、日本の中学校教員が他国に比べ自らの指導に自信を持っていない傾向が浮かんだ。学級運営や教科指導など12項目で自分がどの程度できていると思うかを回答したが、いずれも参加国で最低。ただ文部科学省は日本人の謙虚さや選択肢が影響している可能性があるとしている。
 学級運営では「生徒を教室の決まりに従わせる」ことに自信を持っている教員が48.8%で参加国平均より約40ポイント低く、教科指導では「多様な評価方法を活用する」26.7%(平均81.9%)などとなった。
 特に低かったのは、生徒の主体的学習参加を促すことが出きているかを聞いた4項目。「生徒に勉強できる自信を持たせる」17.6%(平均85.8%)、「生徒の批判的思考を促す」15.6%(平均80.3%)などと軒並み低かった。
 ただ、選択肢にも問題がありそう。OECDは「非常に良くできている」「かなりできている」「ある程度できている」「全くできていない」の四つの選択肢から選ばせ、「非常に」「かなり」を合わせた数を、自信を持つ「自己効力感が高い」教員と定義した。
 文科省によると、日本は「ある程度」と回答した割合が高く、「日本の教員は高い水準を目指し、謙虚な自己評価をしている可能性がある」としている。