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田奈高「図書室カフェ」

神奈川新聞2015年2月4日

気楽な会話、解決目指す
悩み 不安に寄り添う

 「図書室カフェ」で高校生を支援―。県立田奈高校(横浜市青葉区)で生徒や卒業生を支える新しい取組みがスタートした。学校とNPO法人が協力し、週に1回、図書室に無料で飲食ができるカフェをか開店。生徒の居場所をつくり、そこでの会話から就労や日常生活などの悩みや不安に寄り添い、解決につなげることを目指す。(尹 貴淑)

 毎週木曜日の昼休みと放課後、同校の図書室は「ぴっかりカフェ」に姿を変える。机に並ぶのは、ジュースやコーヒーなどの飲み物とお菓子や軽食。授業終了のチャイムが鳴ると続々と生徒が集ってきた。
 「何年生?」「ココアできたよ」
 活動の中心を担うNPO法人「パノラマ」(申請中)理事長の石井正宏さん(45)が生徒に声を掛ける。同校司書の松田ユリ子さんは、教員らが作った白玉ぜんざいを振る舞う。
 友人と弁当を食べたり、教員と進路の話をししたり、生徒の過ごし方はさまざまだ。友人と来た3年生の女子生徒(18)は「先生たちとたわいない会話やふれ合いが楽しい。ここは気楽でいられる」。午後の授業が始まる直前まで、生徒の姿は途絶えなかった。
 同校は県立高校に3校ある「クリエイティブスクール」の一つ。さまざまな理由から、中学校までに学力面などで持っている力を発揮し切れなかった生徒を積極的に受けて入れている。経済面や生活面で困難を抱える家庭で暮らす生徒も少なくない。同校では外部資源を積極的に活用しながら、生徒支援に重点を置く教育活動を行っている。ぴっかりカフェもその一環だ。
 もともと2011年度から3年間、横浜市などの協力を受け、若者支援を行っている石井さんらが、生徒との相談と有給職業体験プログラム「バイターン」を実施していた。しかし、14年度は運営資金のめどが立たず、相談事業を休止。何とか復活せたいとパノラマがクラウドファンディングなどで資金を集め、昨年12月からカフェをスタートさせた。
 同校と石井さんがともにカフェの長所として挙げるのが、「いろいろな大人と出会えること」。石井さんは「以前の相談事業では先生には言えなかった話が、生徒から出ることもあった」と話す。また、カフェでは外部から講師を招き、女性と出産・仕事についての座談会や調理体験などの企画も行う。中野和巳校長は「家庭の事情などで文化的なものに触れる機会が欠けていた生徒もいる。図書室を居場所にすると同時に、生徒に文化的なシャワーを浴びせることができ、困難も可視化させられる」とその効果を話す。
 将来的には、同様の取り組みをほかの場所でも広げていくことを目標にしている。石井さんは「困ったことがあったとき、顔が浮かぶ大人であれば相談しやすいはず。カフェで信頼関係をつくり、緩やかに伴走していきたい」と話している。