県教育委員会は10日、現在142校ある県立高校の再編・統合を進め、2027年度までに20〜30校減らす方針を明らかにした。来年度からスタートする県立高校改革の一環で、少子化に伴う対応。今月中にまとめる「県立高校改革実施計画」(3期12年計画)素案に再編・統合の全体規模を盛り込み、12月に県議会に示す第T期実施計画で最初の4年間に統廃合する対象校を公表する。
同日の県議会本会議で、自民党の嶋村公(横浜市港北区)、民主党の山口裕子(同都筑区)の2氏の代表質問に桐谷次郎教育長が答えた。
桐谷教育長は再編・統合について、「全日制進学率の向上を図るために必要な生徒定員数の確保を基本に考えている」と説明。その上で「全県を5地域に分けて生徒数の同校と学級数を基に学校数を推計し、高校の規模やタイプを加味して検討し、現時点では全体でおおむね20〜30校程度の削減を見込んでいる」と述べ、初めて再編・統合の規模を明示した。
大がかりな再編・統合は2000年〜09年度の県立高校改革推進計画以来。統廃合の対象校は、地域別の生徒数の動向をはじめ通学の利便性、校舎の老朽化などを勘案して検討。質の高い教育の充実を目指し、全高校の教育課程の改編を進めながら絞り込んでいく。
学校規模は小さくなるにつれ、部活動の部員や顧問が不足したり、教員の業務分担が増えたりするため、現行で「1学年6〜8学級」としている標準規模以上の学校経営を再編・統合で目指す。有識者による県立高校改革推進検討協議会が14年6月の報告で「1学年8〜10学級を標準とすることが望ましい」とした提言も尊重していく。
県立高校改革実施計画は、中長期を展望した12年間の全体計画と、4年ごとに分けた三つの期別計画で構成。再編・統合の対象校は期別計画ごとに順次公表する。第T期実施計画(16年度から4年間)には統廃合の対象だけでなく、県立高校改革で挙げた各改革メニューを導入する対象校も盛り込む予定。
県立高校改革は再編・統合のほか、子どもたちが障害の有無にかかわらずともに学ぶインクルーシブ教育実践校の指定、グローバル人材の育成に対応した国際バカロレア認定校の設置、クリエイティブスクールの増設―などを柱に進める予感。 (高本 雅通)
【県立高校改革再び】“学び直し”増設 国際課も
県教育委員会が10日に明らかにした県立高校を20〜30校減らす方針は、2000年から10年間で50校を統廃合して25校に絞り、新タイプの高校を多数誕生させた県立高校改革推進計画を上回る規模と成る可能性がある。クリエイティブスクールの増設やグローバル人材の育成に対応した「国際バカロレア認定校」の設置とともに、大規模な高校改革が再び動き出そうとしている。(青木幸恵)
神奈川の県立高校は、生徒急増期の1973年から15年間で進めた「高校百校新設計画」に基づき100校が新設された。88年の12万2千人をピークに減少に転じた公立中学卒業者数を受けた県立高校改革推進計画では学区撤廃なども進め、最多で166校だった高校数は現在、142校となっている。
県教委が今年1月に公表した「県立高校改革基本計画」では、再編・統合とともに新たな改革の柱も明記している。「生徒の学びと成長」の視点を最優先する「スチューデント・ファースト」を基本理念に、「質の高い教育の充実」「学校経営力の向上」「少子化社会の中での県立高校の再編・統合」の3本だ。重点項目には、共生社会づくりに向けたインクルーシブ教育の推進、地域のコミュニティの核となる学校づくりなども挙げている。
このほか“学び直し”という位置付けで入学試験に学力検査を課さない「クリエイティブスクール」は、既設の3校が横浜と横須賀にあることを踏まえ、県央と県政に各1校を増設する方向で検討中。国際バカロレアの認定推進高に1校を指定指定する、認定を受けるために不可欠な語学力と専門性に優れた教員の確保にも力を入れていく見通しだ。