スイス・ジュネーブの国連欧州本部で今月中旬、核兵器廃絶を訴える第19代目の高校生平和大使に、県内から横浜市立横浜商業高校の原田桃子さん(16)=同市港南区=が選ばれた。核に反対する米軍関係者の声を聞き、オバマ米大統領のヒロシマ訪問で核廃絶の思いを強くした。平和を希求する広島、長崎の仲間とともに、「核兵器廃絶を後押ししたい」と話す。(吉田太一)
原田さんは5月、平和大使への応募に当たり、母の友人で米陸軍キャンプ座間に在住、勤務する男性(51)宅を訪れた。「日本に核(爆弾)を落としたことは過ちで、核(兵器)を保有しても平和は達せない」と意外な言葉を口にした男性。原田さんは「米軍関係者でさえ核に否定的な考えを持っていることに驚き、平和を願う思いは世界共通と実感した」という。
広島訪問で慰霊碑に献花したオバマ大統領の演説を動画サイト「ユーチューブ」で繰り返し見た。感銘を受けるなか、「いつの日か、証言する被爆者の声も私たちのもとに届かなくなるしょう」という一節に、「微力でも自分も核廃絶を訴える必要がある」と思い立った。
約500人の応募から選ばれた今年の平和大使は、15都道府県の高校1〜3年の男女22人。6月中旬、結団式に出席するため広島を訪れた。被爆者の話にミミを傾け、平和記念資料館(原爆資料館)では被爆をイメージしたろう人形を見て、原爆の恐ろしさを感じた。広島、長崎では核廃絶の署名活動が活発なことを聞き、市民全体の意識の高さを痛感した。
原田さんも、賛同する高校生とともに7月26日から、桜木町駅前などで署名活動を開始。「核廃絶と平和の実現を目指す」と訴え、通行人に署名を求めた。「雨の中、立ち止まって署名をしてくれたり、『皆の願いだよね』と声を掛けてくれる人もいて、使命感を強くした」という。
8月7日から3日間、長崎県で平和記念式典などに出席した後、14日から20日までジュネーブで活動する。「永世中立国であると同時に軍隊を持つスイスの高校生の率直な考えを聞きたい」と同年代の若者との交流を心待ちにしている。
10万人以上の署名を提出し、軍縮会議などでスピーチする予定もある。「核兵器を持たないことは勇気のいることだが、相手を全面的に信頼することの表明でもある。『地球皆家族』などのメッセージを込めて核廃絶を訴えたい」と話す。