命を大切にする心を育もうと、県教育委員会(桐谷次郎教育長)が主催する第5回「いのちの授業大賞」の表彰式が10日、横浜市栄区のあーすぷらざで開かれた。子どもたちが思いや体験をつづった作文を募り、大賞(知事賞)には県立相模原総合高校1年、小野王海さんの「命の授業について」が選ばれた。家族の死により人生観が変わったという心の軌跡を語った作品。表彰式では小野さん自身が力強く朗読した。
県民一人一人が生き生きと暮らせるよう、黒岩祐治知事が県政の基本理念としたのが「いのち輝く神奈川」。学校現場では幼稚園から高校まで「身近な動植物との出会い」「パラリンピックメダリストの思い」など、さまざまなテーマを「いのちの授業」として展開してきた。
いずれも家族や社会の人々、さらには多様な動植物とのつながりの中で私たちが生かされていることを再認識し、命の重さを伝える授業だ。同大賞は、この授業を受けた子どもたちの思いをつづった作文を対象に毎年、行なわれている。
ことしは県内小中高校と特別支援学校から6026点の作品が寄せられ、県教委や外部委員が審査した。大賞に輝いた小野さんの作品は、父親の死により「母親が甘えるのではなく、守りたい大切な人に変わった」体験などをつづったもの。表彰式で黒岩知事は「命のかけがえりなさ、人としての温かさを感じるすばらしい作品」と評し、賞状や盾を手渡した。
神奈川新聞社賞に選ばれたのは県立愛川高校2年、梅澤汐莉さんの「命の素晴らしさ」。「勇気のない自分が嫌いだ」と自己嫌悪に陥っていた時、「人は何かを成すために生を受け、成し終えた時に死んでいく」という言葉と出会い、自信を取り戻していくまでの心の成長を引き込まれるような文章で描いている。「読む人を元気づける作品」と審査会で注目された。(丸山 孝)
実践例や指導ガイド−県教委がハンドブック配布
「いのちの授業」は道徳のほか、さまざまな教育活動で展開されている。学校現場や地域で取り組むためのガイドとして、県教育委員会は実践例などを盛り込んだハンドブックを制作した。
ハンドブックでは、自分が存在することの意義や神秘性、人や環境とのかかわりの中で生きていることの尊さなど「いのち」を多面的に考える定義から始まり、具体的な教育の進め方を提案している。
難病で苦しむ女児が院内学級で書いた詩や絵画を取り上げた小学校での授業。この指導案では、生きたくても生きられない命があることを知り、与えられた命を大切にして、いかに自分らしく生きるか、といった問い掛けをしながら考えを深めていく。
また、東日本大震災で被災した児童生徒の作文を取り上げた授業「命てんでんこ」では、突然の災害から身を守るためにできることなどについて考えている。各実践例とも指導ガイドが添えられている。
かながわ「いのちの授業」ハンドブックは県内の幼稚園や小中高校、特別支援学校、市町村の教育委員会に配布。県のホームページにも掲載されている