教員の長時間労働是正に向けた議論が県内でも本格化してきた。県教育委員会は昨年12月、有識者らによる「県立学校教員の働き方改革にかかる懇話会」を設置した。部活動指導を含めた、2018年度からの業務の見直しや外部人材の活用など、実効性の高い負担軽減策を議論して2月中に取りまとめる予定だ。(山口譲一)
懇話会は大学教授や県立高校長、県体育協会関係者ら6人で構成。県教委が昨年9〜10月に初めて実施した県立高校と特別支援学校の勤務実態調査を受けて設置された。
調査では、時間外労働が月80時間を超える「過労死ライン」の水準に相当する教員が3割に上っていることが判明。常態化する休日勤務は平均1時間48分で、そのほとんどが顧問を務める部活動指導だった。
昨年12月22日に開催された初回では、県教委が検討項目として(1)業務アシスタントの配置拡大(2)スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーら専門人材の活用(3)部活動の教員関与の在り方(4)調査・商会の削減―などを挙げた。
1月18日の2回目会合では、県立高校の副校長や総括教諭ら6人から直接、勤務実態などを聞くヒアリングを行った。
参加した教員は「今回の調査結果は、おおむねわが校の実態と同じ」「昼休みは生徒が相談に来やすく、休憩時間を確保するのが難しい」「平日ならば、大半の先生が午後7時過ぎまで残っている」など、学校現場が直面する多忙化の実態を語った。
また、ある教員は「生徒指導に困難な事案が増えている。保護者への連絡がなかなか取れない。教員の勤務時間を知らないためか、深夜や休日にも学校に電話が掛かってくる。勤務時間の周知も必要だ」と訴えた。
中心的な是正課題とされる部活動への関与として、委員からは「授業準備や家庭の事情で部活動の顧問を引き受けたくないと思っている教員はどの程度いるのか。その数をつかんだ上で、部活動指導員の配置数を検討しなければならない」「休養日設定も検討されているが、土日はハードルが高いだろう。大会日程の設定や試合数を減らす見直しも求められる」などさまざまな意見が出された。
一方、県教委からの各校への調査・照会業務の負担の重さも改めて分かった。削減されてきたものの、16年度は207件に上った。
委員を務める校長は「国や県のほか、民間機関からも年間数十件ある。重複した内容もあり、必要性を精査すべきだ」と指摘。回答の集計作業に、業務アシスタントが効果を上げている現状も示された。
教員の働き方改革を巡っては、国レベルで文部科学省が昨年12月26日、緊急対策を発表。中央教育審議会が提出した中間まとめを踏まえ、業務の適正化を進める方策を列挙した。スポーツ庁も1月16日、中学校の運動部活動で「休養日を週2日以上設定」」するなどの指針案を提示し、高校も準用するよう求めた。
県の懇話会は2月上旬、3回目の会合を開き、18年度県予算案に反対する具体的な負担軽減策を議論する予定。
◆部活動指導員
新たな教員の負担軽減策として、学校教育法施行規則の改正で昨年4月に導入された制度。教員以外の人が大会やコンクールの引率などの顧問業務が可能になる。県内では海老名市教育委員会などが2018年度からの任用を検討している。