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高校生平和大使 国連に署名11万筆

神奈川新聞2018年9月28日

核なき世界 願い届け
鎌倉の佐藤さん

 核兵器廃絶を世界に訴える「高校生平和大使」。鎌倉市の佐藤ハンナさん(17)はこの夏、全国の大使20人の一員としてスイスを訪れ、核なき世界を求め各地で集めた署名11万筆を国連欧州本部に届けた。「一人でも多くの人に核兵器や平和について考えてもらうきっかけになりたい」。かけがえのない日常を守るため、その思いを強くする。(竹内瑠梨)

 捜真女学校(横浜市神奈川区)高等学部2年の佐藤さんが平和大使を志したのは2011年、小学4年の時。日本非核宣言自治体協議会主催の「親子記者」に参加したことがきっかけだ。原爆忌の8月9日前後に長崎を訪れ、二度と惨禍を繰り返すまいと平和を祈る人々の姿に触れた。東日本大震災で被災し、両親や家を失った岩手県の平和大使2人を現地で取材。「被災地の思いや平和の尊さを、世界に発信することが大切」との言葉が心に響いた。「高校生になったら自分も世界に声を届け、核廃絶の願いを継承したい」平和への思いが芽生えた。
 それから7年。佐藤さんは思いを抱き続け、第21代高校生平和大使の1人に選ばれた。署名を募る全国の仲間約200人と共に集めた10万8476筆を届けるため、8月26〜30日、スイスを訪問した。
 国連欧州本部を訪れ、ジュネーブ軍縮会議事務局に署名と千羽鶴を手渡したほか、ノーベル平和賞を受賞した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)本部も訪問。スイス北部のトローゲン州立学校では、広島で被爆し白血病と診断され、闘病の末、12歳で亡くなった佐々木禎子さんの生涯を紙芝居で現地の高校生に紹介。一緒に折り鶴を作るなど交流しながら、同世代の仲間として、共に平和について考えた。
 約10カ所を巡った訪問し、佐藤さんの心に残るのは、軍縮会議で各国50人の大使や外交官と意見交換会を行った経験だ。「核兵器禁止条約をどう考えていますか?」。保有国の大使に問い掛けると、「非保有国のみが批准している状況では、条約は意味を成さない」「保有国も核の数を減らしている」と伝えられた。「核廃絶への思いは、保有国も同じだと言っていた。非保有国と保有国の間で、話し合いを重ねることが大切と感じた」と佐藤さんは言う。
 「平和とは、明日朝起きた時に、これから何をするか決められること」。国連軍縮部で幹部職員から聞いた言葉を胸に刻み、佐藤さんは決意を新たにする。「より多くの同世代に、核兵器について考えてもらう機会をつくりたい。当時の状況を理解し、痛みに寄り添い、関心を持ってもらうことが、核廃絶に向けた大切な一歩だと思うから」