安倍晋三首相は27日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、3月2日から春休みに入るまで全国の小中学校、高校や特別支援学校を臨時休校にするよう要請する考えを表明した。入試や卒業式を実施する場合は、感染防止など万全の対応を取るよう求めた。感染を抑制し、国民生活ゃ経済に及ぼす影響を最小とするために必要となる法案を早急に準備するよう各閣僚に指示した。
新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正を含めた対応が念頭にあるとみられる。首相は26日の会合で全国的なスポーツや文化イベントを今後2週間、自粛するよう要請していた。
臨時休校は、文部科学省が全国の教育委員会などに首相の要請を踏まえ通知を行う。
首相は学校などでの感染拡大を受け「何より子どもたちの健康、安全を第一に考えた」と強調。国内で新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の拡大が続き、政府による対応の遅れが指摘される中で異例の要請に踏み込んだ。大胆な取り組みにより、感染の早期終息に向けた政権の姿勢を示すべきだと判断した。
北海道や千葉県市川市で小中学校などが休校になる措置も踏まえた。ただ教育現場では波紋が広がっており、混乱が生じる可能性がある。
厚生労働省は、保育所は首相要請のた対象外で、小学生を放課後に預かる放課後児童クラブ(学童保育)も原則として開所してもらうよう各都道府県に通知。高等専門学校や幼稚園は対象外になるとみられる。
対策会議で首相は、臨時休校を要請する理由について「多くの子どもや教員が日常的に長時間集まることによる感染リスクに備える観点からだ」と説明。子どもが長時間自宅で待機する状況が想定されるため、行政機関や民間企業に対し、休暇を取得しやすい環境の整備や子どもを持つ保護者への配慮を呼び掛けた。
今回の措置で生じるさまざまな課題について「政府として責任を持って対応する」と明言した。新法案は既存の対策の実効性をさらに高める狙いがあるとも語った。
新型肺炎 休校
緊急措置 でも困惑
県内教育現場 共働き家庭どうする
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相が27日に打ち出した全国の小中高校や特別支援学校の臨時休校。実施に踏み切る3月2日からわずか4日前の表明に、県内の教育現場や関係者に衝撃と動揺が広がった。「あまりに時間がない」「卒業式だけの影響ではなくなった」。子どもたちを守る緊急措置とはいえ、担当者は困惑を隠せずにいた。(報道部)
「えーっ」。首相発言のニュース速報が流れると、横浜市にある公立小の職員室では教員から驚きの声が上がった。男性教諭は「児童と歩んできた1年間がいきなり最終日を迎えることになるのだろうか。教育委員会の連絡を待ちたい」と話すのがやっとだった。
同市教委や県教委は、感染拡大防止に向けた独自の取り組み方針を前日の26日に示したばかり。卒業式や入学式は保護者らの出席自粛を求めながらも、規模を縮小して実施する予定だった。しかし、政府方針はこれを覆すかもしれない踏み込んだ内容だ。
市教委の担当者は「困惑している」と吐露。全市立学校500超の一斉休校による影響は計り知れないとし、「共働き家庭などでは子どもを日中どこに預けるのか、手配するにも時間がかかる」と懸念した。県教委でも職員が情報収集に追われ、担当者は「国からの通知はまだ来ていない。まずは情報を集め、それから対応を協議していく」と話した。
一方、川崎市教委の担当者は「報道を見てびっくりした」。市は27日午前に市立学校の卒業式で保護者の出席も認める方針を示したばかり。担当者は「春休みまでの臨時休校で卒業式だけの話ではなくなった。学童保育なども関係してくるので、全庁的な協議が必要だ」と話した。学習指導要領に基づく教育課程(カリキュラム)が消化できない問題もあるとし、「今後、何らかの判断を国が示すだろうが、それを待つしかない。通知がいつになるのか、あまり時間がないのでどりどりじりじりした気持ちでいる」と困惑気味に語った。
相模原市教委は新たな感染確認の会見の場で、小中学校の対応方針も発表する予定だったが、直前の首相表明で急きょ取りやめた。