本文へジャンプ

ホーム > 神奈川の教育情報 > ニュース >最後の夏に「感謝」

最後の夏に「感謝」

神奈川新聞2020年06月13日

県高野連 代替大会開催
選手ら喜びと安堵感

 県立の進学校として知られる川和は、学校側の計らいで3年生部員21人が視聴覚室に集まり、ライブ配信された記者会見を見守った。
 代替大会の開催決定に、就任7年目の伊豆原真人監督は「今まで野球も勉強も全力でやってきたと思うが、またにユニフォームを着てできることを待って準備しよう」と選手を諭した。
 エースの富田航平(3年)は「他の競技の人たちが引退する中、試合をやらせてもらえるだけで感謝。自粛期間は勉強に時間を割けたので、大会までは野球に打ち込みたい」と残された時間に全力を傾ける。
 同校は昨夏の神奈川大会と秋季県大会で初戦敗退。学業と両立しながら公式戦の勝利を目指してきた。指揮官は「いろいろ揺れたが、今の精いっぱいを出し切ってほしい」と願いを込めた。
 昨夏の神奈川大会準優勝の日大藤沢・山本秀明監督は「(大会が)何もない状態で引退すると思っていた子も多いと思うので、区切りを付けてあげられるのは非常にうれしく思う」と歓迎した。
 チームは8日に活動を再開。30分ごとの手洗い、うがいなど感染対策にも気を配っている。プロ注目の外野手で主将の姫木陸斗(3年)は「甲子園がなくなって悔いがないと言ったらうそになるが、アピールするチャンスができた。仲間と2年半やってきた思いもあるので、全員の持ち味ゃ個性を発揮できる大会にできれば」と語った。
 「甲子園を目指して入学したのでつらい部分があったが、前を向いてやり切ろうという気持ちでやってきた」と語るのは星槎国際湘南の主将・浜田琉大(3年)だ。
 全寮制の同校は緊急事態宣言下でも感染対策を徹底してトレーニングを継続し、本格的な活動開始に備えてきた。「絆や団結力は深まった。優勝するつもりで3年生全員で頑張っていく」と目を輝かせる。
 「(開催決定まで)長く時間がかかったのはそれだけ選手のことを考えてくれてのこと。指導者を代表して高野連に感謝したい」と土屋恵三郎監督。「親孝行の思いや、感謝を感動で返せるように思い切って挑戦させたい。心技体を一回り充実させ、ワンチームになって頑張ってほしいな」と話した。(泉光太郎、木田亜紀彦、須藤望夢)

●表明は本当によかった
黒岩祐治知事の話 先日、現役の高校球児から自筆の手紙を受け取った。全部読んだが、権限は私でなく県高野連。代替大会を考えていると表明したことは本当によかった。感染防止対策をしっかりゃった上で安全に実施してほしい。

心情配慮、水面下で奔走
 球児たちの張り裂けそうな心情に最後まで配慮した。全国各地から代替大会実施のニュースが伝えられるなか、県高野連の理事らは過度な期待を抱かせないように水面下で奔走してきた。
 「代替大会を開催すると言って、中止になったら子どもたちに二重のショックを与える。そんなことは許されない」とある理事。県内の新型コロナウイルス感染がなかなか収まらない状況に加え、学校生活が通常通りに送られていないこともまた決断を慎重にさせた。短縮となる夏休みを考慮し、悪天候で日程を消化できなくても23日が最終日と決めた。
 今回の代替大会実施には県高野連の前33人の理事が賛成。県教育委員会が作成した県立校の部活動ガイドラインでは対外試合の解禁は8月末以降だったが、「特例的に対外試合を実施できる」と方針が変わったことも追い風になった。今後は県教委など関係機関との調整を進める。
 ようやく見えたスタートライン。ただ、加盟校の練習状況には差があるのが実情だ。現在も活動休止中の学校があり、練習不足によるけがのリスクや熱中症への対策、コロナ予防に気を配りながら、学業の遅れにも対応していく必要がある。
 県高野連も公式戦が開催できる公認球場の確保やスケジュール調整など課題は山積み。感染対策を含め、いつもの「夏」以上に神経を使うことになる。県高校総体が中止になった他の部活動などの状況を鑑み、県高野連の栗原豊樹専務理事は球児にメッセージを送った。
 「自分たちに与えられる機会を重く感じてほしい。代替大会は無条件に与えられるものではなく、いろんな方の理解、協力があって、ここまで運んでいる」(小林 剛)