相模原市緑区の県立城山高校生物部による緑藻の研究が注目を集めている。バイオ燃料として利用可能な油脂をつくり出す一方で、温度変化に弱いなど長期にわたる保存が難しい課題があった。これを克服するため、同部の3人がカップラーメンから発想を得たという「発明」とは―。(松島 佳子)
同部が研究対象としたのは緑藻「クラミドモナス」。池や川に生息し、葉緑体を持つ単細胞生物だ。緑藻はバイオ燃料としての可能性を秘め、近年実用化に向けた研究が進む。クラミドモナスはモデル生物として広く用いられている。
課題は保存方法だった。超低温の温度管理が必要とされ、須藤克海部長(17)=2年=は「高校では企業や大学のように高価な低温庫は購入できない。私たちにも可能な方法はないかと考えたのが研究のきっかけ」と明かす。
部員3人で知恵を絞った結果、考えついたのがカップラーメンに応用されている常温乾燥という保存方法だった。乾燥状態で保存し、水を掛けると活性化する。この方法なら安価に保存できると考えた。
さらに、クラミドモナスのエネルギーとして糖に着目。クラミドモナスは光合成生物で、部員の平井明笑さん(17)=同=は「光合成でつくられた糖をエネルギーにしている。糖を与えれば長く保存できるのではないかと思った」と話す。
この二つの発想を実践。糖を与えたクラミドモナスは1カ月間乾燥させても水を加えると見事に「生き返った」(須藤部長)ことを確認したという。緑藻を安価に、そして簡単に保存する新技術になるかもしれないと、3人は自信を深めた。
昨年11月には若手研究者が成果を競う大会「IEEE TOWERS」でこの成果を発表。高校生として初めて最優秀に当たる「Best Award」を受賞した。乾燥させたものを再生する発想や、バイオ燃料による電力の安定供給に光をともす意義が、審査員らから評価された。
部員の道市龍雅さん(17)=同=は「微生物をクリーンエネルギーの源として広く活用できれば、持続可能な社会づくりにつながる」と期待する。3人はさらにこの技術に関し、探求を続けるという。