県立高校で部活動の指導中にけがを負ったのに公務外の災害とされたとして、高校教諭だった女性(43)が地方公務員災害補償基金に対し認定処分の取消を求めた訴訟で、横浜地裁(岡田伸太裁判長)は5日、女性の請求通り処分を取り消す判決を言い渡した。(報道部)
判決による、女性は2014年8月、別の県立高校で保健体育の教員としてハードルの実技研修中に左膝の靱帯を損傷し、そのけがは公務災害と認定された。一方、16年6月、女性は男子バスケットボール部の指導で実践練習中に左膝が外れ、左膝の別の靱帯断裂や内側半月板損傷のけがを負った。同基金神奈川県支部長はこのけがについて19年3月、公務外の災害だとした。
岡田裁判長は「女性のけがは、公務に内在する危険が現実化したもの」と判断。「処分取り消しは免れない」と結論付けた。
訴訟では、部活動指導が公務中であることに争いはなかったが、同基金側は、女性のけがは14年のけがよりもさらに前のもので、女性の膝に掛かったのは日常動作でも生じうる軽微な力だったなどと主張。判決は基金側の主張を「証拠に基づかない意見。十分に加重な負荷が生じていた」などとして退けた。
泣き寝入りなくさねば 原告側
「一生懸命指導したのに公務災害と認められず悔しかった。これから教員となる人たちのためにも環境を変えなければいけないと思ってきた」
地方公務員災害補償基金県支部長が部活動中のけがを公務災害と認めなかった処分に異論を訴えてきた原告の吉田麻寿美さん(43)は、横浜地裁の処分取り消し判決に安堵の表情を見せた。判決後の報告集会にオンラインで参加し、2020年からの訴訟に込めた思いを語った。
関係者は他にも教員のけがや療育費が公務外とされる事例があると指摘する。
担当した岡田尚弁護士によると、吉田さんのほかにも教員が、授業中や体育祭でけがを負ったが17〜18年に公務外とされ、この処分の取消訴訟が2件、同地裁で係争中という。
県立高校教職員組合(原文ママ←掲載者加筆)で役員経験が長い馬鳥敦さんも、教員が業務中にけがをしたのに公務外とされ、相談を受けた組合が支援して再審査請求し、公災認定された事例が複数あると説明。
「業務の多忙や、申請までのハードル、諦めなどから、そもそも相談されないケースがある」とみる。「今回も同基金側が最初から公災と認めるべきだった。粘り強く取り組んだ成果で、現場の先生たちが今後、泣き寝入りしないためにも意味のある判決だ」と話した。 (竹内 瑠梨)