2022年度に県内公立中学校から公私立全日制高校に進学した生徒の割合(全日制進学率)が、8年ぶりに90%を割った。いまの中学3年生が全日制を希望する割合(全日制希望率)も90%を下回った。自分のペースで学べる通信制高校を希望する生徒が増えていることなどが背景にある。公立全日制は進学率も低下傾向で、学校によって状況は異なるものの「公立全日制離れ」がじわじわと進んでいる。(成田 洋樹)
通信制が存在感
県教育委員会によると、22年度のの全日制進学率は89.6%(前年度比0.7ポイント減)で、14年度以来の90%割れを記録した。県外高校を除いた内訳は、公立59.0%(同1.1ポイント減)、私立22.5%(同0.7ポイント増)だった。
公立の進学率が下落した一方で私立が上昇したのは5年連続。国や県の学費補助拡充で経済的に選びやすくなったことが背景にあるという。
全日制進学率はなぜ低下したのか。以前は少子化を背景に県教委と私立側の協議で全日制公立の定員枠が絞られた結果、経済的理由で私学も選択できずに定時制への不本意入学者が続出したことで生じたが、近年は多様な生徒に対応できる通信制の存在感が高まっていることが要因だ。
22年度の通信制進学者は5年前の1.6倍の4029人に上り、公立中学卒業生の6.0%(0.6ポイント増)に達した。都道府県をまたいで募集する私立広域通信制が大半を占め、不登校の生徒のほか全日制の画一的な指導になじめない生徒らの「受け皿」として注目されている。
県教委と私立側は全日制進学率の向上を目指し、23年度の募集人員を設定した。想定では90.3%になるとしたが、目標達成は見通せない。そもそも全日制希望率が90%を下回る事態になっているからだ。
県教委が公立中学校卒業予定者に昨年10月時点での進路希望を尋ねた調査では全日制希望率は89.7%(0.4ポイント減)にとどまり、1970年(89.0%)以来の90%割れを記録。このうち県内公立は5年連続で80%割れとなる76.3%(1.1ポイント減)で、県内私立は8.2%(0.4ポイント増)だった。一方、通信制は4.2%(0.5ポイント増)に上った。
公立全日制では志願者が多い学校がある一方、志願者が定員に満たない学校が増加傾向にある。現場発の学校改革としてさまざまな困難を抱えた生徒らを支援する取り組みが全国から注目を集めた時期もあったが、実践の継承が課題となっている。
県教委高校教育課は全日制希望率低下について「90%以上の目標を掲げている中では厳しい数字」と受け止めた上で、公立全日制が苦戦している状況については今後の県立高校改革を通じて対応していく考えを示した。
全日制にも多様性を
基県立高校教諭で通信制高校に詳しい星槎大・手島純教授(教育学)の話
公立全日制高校の進学率と希望率の減少は、私立への進学がかつてほど経済的負担にならないことと、通信制進学希望者が増えたことが要因だ。通信制在籍者増は全国的な傾向で、5年前は高校生の20人に1人だったが、現在は13人に1人を占める。登校日数を自由に設定できるなど柔軟な対応が可能なため、不登校や発達障害といった多様な生徒に対応できる場として注目を集めている。公立全日制にも「個に応じた指導」が求められている中で、その対応は必ずしも十分とは言えない。多様な生徒が学びやすい学校づくりをより一層進める必要がある。 |