県内公立高校の2024年度入試で、全日制の募集定員が前年度より900人減る見通しになった。県内公立中学3年生が前年度より約千人減少することなどに伴うもの。一方。県内私立ははほぼ現状維持の50人減とする方向。県内公立中学卒業者のうち全日制高校に進学した割合(全日制進学率)が2年連続で90%台を割っている中、90%台に乗せる目標値を設定した。(成田洋樹、視点も)
県教育委員会によると、来春入試に臨む県内公立中学校卒業予定者は6万703人。県教委と県私立中学高校協会の実務者らで構成する「県公私立高校協議会」が28日開かれ、公立の募集定員は3万9850人、私学は1万4950人を目標とするとした。9月6日の「県公私立高校設置者会議」で正式に決まる。県教委は目標値について、26年度に統合を控える県立小田原城北工業と大井の定員を減らす方向であることなども考慮したという。
23年度入試では公立中学卒業予定者が前年度より870人増える見込みだったため、公立全日制の目標定員は400人増の4万750人、私立全日制は300人増の1万5千人としていた。実績では、公立は定員割れの学校があったことなどから目標に777人届かず、私立は50人上回った。
影響で23年度の全日制進学率は、前年度比0・3ポイント減の89・3%となった。内訳(県外高校進学者らを除く)は県内公立58・8%(同0・2ポイント減)、県内私立22・1%(同0・4ポイント減)だった。
一方で通信制は6・3%(同0・3ポイント増)と上昇が続いている。不登校生徒らの「受け皿」として自分のペースで学べる通信制への進学者が増えており、都道府県をまたいで募集する私立広域通信制高校の存在感が増している。国や県の学費補助拡充で私立全日制も以前より経済的に選びやすくなっており、公立全日制の中には生徒集めに苦慮する学校が出てきている。
24年度入試で公私双方が目標を達成すれば、全日制進学率は90・1%になる見込みという。
<視点> ニーズ変化 対応必要
全日制進学率が2年続けて90%台を割り、中学生の志願動向やニーズの変化が浮き彫りになっている。 しかし、今月2回開かれた県公私立高校協議会ではそうした観点から対応を考える議論は深まらなった。
県教委は全日制進学率の向上を掲げたが、私立広域通信制高校進学者が増える傾向が続いているため目標達成は見通せない。公立全日制高校はさまざまな生徒を受け入れる役割があるはずであり、全日制進学率低下は公立全日制のありようが問われる事態と受け止めるべきだろう。
学び直しを支援する県立全日制クリエイティブスクール(5校)についても同様だ。全日制進学率向上を見据えて2009年度に本格導入され、現場発の学校改革は全国から注目を集めた。志願者数が安定している学校もあるが、大幅な定員割れとなっている学校もある。継続的な取り組みを支える施策や人事を行う必要があるとの指摘は高校教育関係者から少なくない。
全日制進学率低下を巡ってはこの間の県教委会議でも審議は低調で、本格的な議論はなされなかった。
不登校の生徒を中心に、公立全日制ではなく私立広域通信制を選ぶ理由や背景には何があるのか。公立全日制に足りないものはないのか。全日制進学率低下は各校の魅力向上といった対症療法ではなく、生徒の実態やニーズに合わせた学校づくりを進める必要性を突き付けている。 |