本文へジャンプ

ホーム > 神奈川の教育情報 > ニュース >「地震峠」漫画で後世に

「地震峠」漫画で後世に

神奈川新聞2023年11月12日

津久井高の生徒 相模原市に寄贈 <震災1923 100年の先へ>
「命守る行動つながれば」

 関東大震災で16人が犠牲になった相模原市緑区鳥屋にある「地震峠」の記憶を後世に伝えようと、県立津久井高校(同区三ケ木)の漫画研究部が漫画を制作した。生徒たちは今月1日、地元住民らと市役所を訪れ、千冊を寄贈。100年前の大震災に思いをはせ「漫画が地震峠を知るきっかけになってくれたらうれしい」と語った。(松島 佳子)

 鳥屋地域では関東大震災で山の斜面が崩落する「山津波」が発生し、子どもを含む16人が命を落とした。土砂が堆積した場所は「地震峠」と呼ばれ、昨年、16人の名前などが刻まれた新たな伝承碑が設置された。
 大震災から100年の今年、遺族らでつくる「鳥屋・地震峠を守る会」が「若い世代に継承していきたい」と津久井高漫画研究部に漫画の制作を依頼。同部の部員や卒業生らが約2カ月かけて完成させた。
 漫画のタイトルは「百年の時を越えて繋がる命」。女子生徒が鳥屋に住む祖父とともに地震峠を訪れ、震災の歴史を学ぶ物語だ。同部の生徒たちは「当時のことを詳しく知りたい」と制作前に現地を訪れ、遺族に話を聞きに行ったという。
 1年の佐藤美咲さん(16)は、「亡くなった16人のうち、8人は行方不明のままだということを知った。犠牲になった方の思いをつないでいきたい」と話す。
 3年の杉本美恵さん(17)も「漫画制作の話をいただくまで地震峠のことを知らなかった。漫画を通して私たちの世代や小中学生に歴史を伝え、同じような悲劇を繰り返さないように防災対策を考えていきたい」と意欲を口にした。
 市は市立小中学校に漫画を配架するほか、各消防施設やまちづくりセンターにも配布するという。
 鳥屋・地震峠を守る会の小島信彦会長は「若い人が漫画を読み、地震峠のことが少しでも頭に残ってくれたらうれしい。そして、いざというときに『早く避難しなきゃ』と命を守る行動につながってくれたらと思う」と笑顔。
 鳥屋地域振興協議会の秋本敏明会長も「津久井高校の生徒たちの情熱と優しさが詰まった作品が発刊できて、感謝の気持ちでいっぱいです」と語った。