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ビジネスで課題解決

神奈川新聞2024年08月21日

日本政策金融公庫 高校生に出張授業

 創業支援に携わる日本政策金融公庫が、ビジネスプランを題材にした授業を全国の高校などで開講している。毎年秋には、収支も含めた事業計画を競う「高校生ビジネスグランプリ」を開催。自ら社会課題を解決する思考力や行動力を身につけてもらう狙いだ。この「出張授業」が6月上旬、横浜市中区の県立緑ケ丘高校でも開かれた。

■泥臭く行動を
 授業は2年生7クラスを対象に、探究の時間を使い3週連続で行われた。教壇に立った公庫職員の辻井拓也さんは、ビジネスを「社会の課題を解決して報酬を得ること」と定義。もっと便利ならば…と「課題」を受け止め、既にある商品やサービスを組み合わせ、新たなサービスを考案することだと説明した。
 その要件は、(1)社会や地域への貢献につながる(2)ニーズを把握し、具体的な顧客を想定している(3)人、モノ、技術、ノウハウなど経営資源を考慮している(4)ビジネスを継続できる収支計画がある―の4点。例として、ラッカセイの殻を枕の詰め物として活用する「落花生まくら」を挙げた。消臭効果に着想した商品で、農産物の消費拡大や廃棄物の有効利用につながる。
 その上で、顧客層を「10代の娘がいる40〜50代男性」など具体的に想定し、価格や販売方法、競合商品、市場規模など全体像を把握する必要性も説いた。辻井さんは「泥臭く汗を流し行動する。そしてアイデアは不格好でも形にしてほしい」と、ネット上の情報でなく実社会で自ら体験するようアドバイスした。

■思考する力に
 同公庫による出張授業は昨年度、約1100回を数えた。働き方の変化や人口減少を踏まえ、創造的な新事業に挑むアントレプレナーシップ(起業家・企業家精神)を育み、将来への創業機運につなげたい考えだ。
 学校側も、生徒の課題解決力の向上に期待する。同校は文部科学省が指定するスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の一つ。花田あゆみ教諭は「ビジネス的な思考は、科学的思考力を持ったグローバルリーダーを育てるSSHの目標に親和性がある」と話す。
 生徒からは「スマホが交通機関にどのような影響を与えるのか」「ロングセラーのお菓子を作るには」など、87組の研究テーマが提案されている。高校生ビジネスグランプリへの応募は必須でないものの、全国の約500校、約5千組が競う貴重な機会とあって、積極参加も視野に入る。
 3回の出張授業は、研究テーマを明確化する効果もあったという。例えば、古典文学のようにビジネスから縁遠そうなテーマでも、ゆかりの地を訪ねる「聖地巡礼」のツアーを企画するなど、意外な視点が助言された、花田教諭は「ビジネスの思考の枠組みは、さまざまな場面に応用できる。何のために研究するのかを再確認する契機になれば」と先を見据えた。