県教育委員会は新たに県立高校8校を2030〜31年度に再編・統合し、4校を削減することを決めた。
公立高校はさまざまな生徒を受け入れる「セーフティネット(安全網)」としての役割がある。再編・統合で安全網が狭まり、ほころびが生じるような事態は避けなければならない。
県教委は「県立高校改革実施計画」(16〜27年度)で少子化を理由に再編・統合を進めるとして20〜30校の削減を掲げた。既に2000年代に25校削減した経緯があることなどから、教育関係者は「あまりにも過大な削減数だ」として計画の妥当性を疑問視していた。
ふたを開けてみれば、県内への転入が増えるなどして生徒の減り幅が見込みを下回った。これを受け、県教委は今回の4校を含めて18校の削減にとどめたという。
ただ、中学生への影響を考慮すると、削減数が限定されたとは言い難い。とりわけ、茅ヶ崎西浜高校(茅ヶ崎市)と30年度に統合される寒川高校(寒川町)に関しては町から高校がなくなるため、波紋が広がっている。
地元の期待を背負って1978年度に開校した寒川高校は、多様な生徒を受け入れてきた。学業不振でわらにもすがる思いで同校を受験し、合格した経験を持つOBの大学院生は「寒川高校が統廃合されると、経済的に私立を選択できない場合、進学先の確保に苦慮する生徒が出てこないか」と危機感を強めている。
影響は近隣にとどまらない。JR相模線沿線にある同校がなくなることで、沿線に住む生徒の選択肢も減ることへの懸念も出ている。
今回の統廃合で浮かび上がるのは、多様な生徒を受け入れる公立高校全日制が自宅から近い場所にあることの意義だ。自分のペースで学べる私立通信制高校の存在感が増しているのも、裏を返せば公立高校全日制が生徒の状況に応じた柔軟な対応が不十分であることを示している側面がある。公立高校の安全網としての役割を再認識すべきときだろう。
県立高校の学区が撤廃されてから20年たつ。学力や家計の状況によって生徒の選択肢に差が出ていないか、改めて考慮する必要がある。